研究課題/領域番号 |
20K01164
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
荒井 良雄 帝京大学, 経済学部, 教授 (50134408)
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研究分担者 |
箸本 健二 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10269607)
上村 博昭 尚美学園大学, 総合政策学部, 講師(移行) (70835850)
乗川 聡 帝京大学, 経済学部, 講師 (30339668)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 離島 / 離島活性化 / ネットスーパー / 九州地域 / 隠岐諸島 / 飛島 / スマートアイランド / フランス |
研究実績の概要 |
本年度は,離島の流通・消費インフラの最近の変化に関する情報を収集し,予備的な現地調査を行う予定であったが,コロナ禍の影響で,現地調査の多くは年度内の実施を断念せざるを得なかった.そのため,2022年度以降の現地調査実施のための準備作業を進めたが,その過程で,以下のような点が判明した. (1) ネットスーパーに関するアンケート調査のための情報収集の結果,離島のネットスーパーの運営方法としては,専用在庫と連動した電子カタログを用いた本部統括方式と、離島航路の発地に近い実店舗の在庫をピッキングする実店舗方式があるが,それぞれの方式で,離島特有の問題点も存在する.一方,ネットスーパーのシェアの高まりは,島内の既存小売業の存立基盤を脅かすことになり,それを利用できない住民の利便性低下や,荒天時等の商品在庫不足など,様々な弊害も予想される. (2) 流通関係でネット利用の盛んな島根県隠岐諸島の小売業全事業所を対象としたアンケート調査の結果,小売事業者は,島内の過疎化や高齢化による市場の縮小に直面するとともに,安価かつ幅広い商品を取扱うネット通販,島内に進出したチェーンストアとの競合を強く意識していることを確認できた. (3) 2021年度の「スマートアイランド推進実証調査」を実施した山形県酒田市の飛島は,高齢化が著しく進み,定期船の欠航が多い冬期には,島内の商店もほとんど営業していないが,最近は,島外からの移住者らによって,島内の活性化に向けた様々な活動が行われており,「実証事業」も彼らの活動の一環である. (4) 外国での離島における流通・消費インフラの事例として,フランスに関する予備的な文献調査の結果,同国の同インフラの整備は,国内での諸制度の統一化政策とEUの地域格差是正政策の影響を受けている可能性があることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は,新型コロナ感染拡大のために,当初予定していたような離島に対する現地調査を実施することができず,インターネット上で検索・閲覧可能な文献・記事から,本研究課題に関連して注目される動きについての情報を収集・整理することに留まらざるを得なかった.今年度に入っても,小規模離島における現地調査は制約が大きい状況が続いているため,ネットスーパー事業やスマートアイランド事業等についての文献調査等から取り上げるべき事例を検討し,現地調査の準備を進めることとした.ネットスーパー事業については,離島を抱える九州地域の商工会議所に対して,ネットスーパーを含む島内の流通事情を調査するためのアンケート調査を企画し,実施に向けた準備作業を進めた.さらに,隠岐諸島については,申請者らの流通関係調査の実績があることから,先行してネットスーパーの導入による島内流通の変化を調査することとし,隠岐諸島内の小売業全事業所を対象としたアンケート調査を実施した.一方,今年度の「スマートアイランド実証実験事業」(国土交通省)に採択された山形県酒田市飛島に注目し,現地のとのメールによる情報収集など,実地調査の準備をすすめたが,冬期には現地調査のための渡航が困難なため,結果的には,年度を越えた4月になって,現地での予備調査を実施した.このように離島での現地調査の準備は進みつつあり,政府・自治体による移動制限の可能性も低くなったことから,2022年度はある程度の調査実績を上げうるものと見込まれる.ただし,小規模離島の調査時期が相当に限られるという状況から見て,研究期間を1年間延長することが必要であろうと予想している.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に新型コロナワクチン接種がかなり進んだことから,小規模離島等へ研究目的で渡航することの制約が概ね解消された.したがって,今年度は,これまで文献やネットでの情報収集を行ってきた離島での現地調査を本格的に開始する.当面は,これまで準備を進めてきた隠岐諸島での現地調査,および,すでに予備的な現地調査を行った酒田市・飛島での追加の現地調査を進める.また,事例調査の幅を広げるために,たとえば,飛島に類似した条件下にある新潟県粟島の現地調査などを検討したい.一方,離島でのネットスーパーの状況については,現在準備を進めている九州地域の商工会議所等へのアンケート調査を実施し,可能であれば,その結果から抽出した事例についての現地調査を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度も,予定していた現地調査の開始が遅れたために,予備的な現地調査しか企画できず,その予算執行も2022年度にずれ込み.そのための調査旅費が執行できなかった.加えて,準備を始めていたアンケート調査も,調査対象の状況を勘案して,実施を2022年度に延期することになったために,今年度に予定していた研究予算の多くが未執行で,次年度に繰り越さざるを得ないことになった.しかし,2022年度には,懸案の現地調査も実施できる見込みであり,アンケート調査の実施準備も概ね完了していることから,予算の執行を進められると考えている.ただし,上記のように,すべての現地調査および分析作業を2022年度中に完了することにはかなり困難が伴うとみられるので,研究期間を1年間延長することが必要であろうと考えている.
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