2019年中に申請した本課題は、2020年度から実施する予定であった。その研究内容は、東アジア海域における1800年代の近代海図の整備過程を、その技術的背景の理解も含めて明らかにすることが目的であった。それらを明らかにするために、特に日本周辺を対象として、英国水路部による海図の整備過程、19世紀後半における米国測量艦隊の活動、西欧における探検的航海などのテーマを中心とすることとした。それらに関わる資料は、主にロンドン(イギリス)における大英図書館や英国公文書館、ワシントンDC(アメリカ)における米国立公文書館やアメリカ議会図書館などに所蔵されており、それらの機関での調査を基本作業とした。 しかし、2019年後半頃から新型コロナウイルスによる感染が拡大しはじめ、2020年1月には日本で確認されるとともに、世界的な流行へと拡大する状況となったことから、海外渡航が不可能となり、海外での資料調査が実施できなくなった。この時、流行の終息時期を見通せないことから、熟考のうえ、終息するまでの間は研究の開始を一時的に待機させることとした。それは、本課題の経費の多くが海外調査費であり、申請内容と異なる研究費の使い方に一方的に転換させるのは控えるべきと判断したからであった。 その後、所属校の意向もあって、予定していた国外調査はもちろん、国内調査についても自粛することとなり、それは2022年度まで継続した。そのため、この間、ほぼ研究費を執行することができず、2020年度からの3年の研究期間では、研究計画の準備作業として関連する文献の収集や過去に調査した関連資料の整理作業、関連テーマに関する研究成果の報告(雑誌論文や書籍)にとどまり、その執行率は全体の約20%という状況となった。その結果、本課題の目的は十分に実施することができず終了した。
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