研究課題/領域番号 |
20K01177
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
塚本 章宏 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (90608712)
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研究分担者 |
鳴海 邦匡 甲南大学, 文学部, 教授 (00420414)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歴史GIS / 近代 / デジタルアーカイブ / 地図製作 / 定量的評価 |
研究実績の概要 |
本研究は、近代地図の発展過程において伊能図が果たした役割について、GISを援用した定量的分析により、相互の影響・継承関係を明らかにすることを目的としている。2020年度は、本研究の基盤資料である米国議会図書館に所蔵された伊能大図207図幅の入手および製作過程の整理、GISデータベース化の作業を進めた。 米国議会図書館に所蔵されている伊能大図は207図幅は、2001年3月まで日本人研究者による「未調査」資料であったことで、当時は非常に注目を集め、調査研究が進められた。先行研究では1897年以前から米国議会図書館のカタログにあり管理されていたことがわかっている。また、これら伊能大図207図幅内には、明治期に複写・転写された際に追記されたとされる方眼や書き込みがあり、近代地図の作成過程を解明する手掛かりになると考えられる。まずダウンロードした図幅をデータベースとして管理し、記載情報をまとめる。具体的な作業としては、製作過程あるいは、近代地図に書き写す際に追記された情報をGIS上でトレースして、ポリゴンデータとしてデータベース化の作業を進めている。また、地図表現上の測量線、海岸線、水部、国・郡・地名、領主名、城、寺社といった伊能図として、あらかじめ記載されている情報については『デジタル伊能図』の成果を活用して、統合的に分析を進めていく計画である。 しかしながら、現地調査を実施できないため、現地で当時の記録についての調査や現物資料の確認が困難であることから、収蔵経緯の調査および精緻なデータベース化は未完のままである。今後も、こうした現地調査が難しい状況が続くと予想されることから、デジタル画像データの入手とそれらの画像によるGIS分析を中心とした計画などを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究における2020年度は,現地調査を主体とした収蔵経緯の調査および地図の書き込み情報のデータベース化を並行的に推進することを計画していた。現地調査の対象は、米国議会図書館や英国図書館としていたが、新型コロナウィルス蔓延の影響による現地への渡航が困難な状況下が続いたため、所蔵機関がオンラインで提供しているデジタルアーカイブサービスを利用したり、これまでに関係を築いていたライブライアンを通じての資料の収集に可能な限り努めた。 米国議会図書館が所蔵する伊能図は、現在、図書館のオンライン検索システムからダウンロードすることが可能となっている。これらを入手し、リスト整理した上で、GISデータとしてデータベース構築を進めている段階である。こうしたデータベースを整備することで、明治期に複写・転写された際に追記されたとされる方眼や書き込みがあり、近代地図の作成過程を解明する手掛かりになると考えられる。具体的には、製作過程あるいは、近代地図に書き写す際に追記された情報をGIS上でトレースして、ポリゴンデータとしてデータ化していく作業となる。 今後、一定程度のデータが整った段階で、描画精度についての定量的分析を進めていく計画である。デジタルデータの入手・整理を終え、リスト化・データベース化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
米国・英国の所蔵機関やライブライアン個人とは、適時連絡を取り合いながら情報交換を行っている。また、インターネットを通じて、ある程度の書誌情報や追加のデジタル画像データを入手することができる。しかし、デジタル画像データについては、付紙の有無、色彩の再現、表裏の確認といった画像データではわからない実物との相違があり、現地の所蔵機関で現物を確認しなければ得られない情報がある。 こうした本研究計画が海外所蔵機関における資料調査を大前提としているところ、昨今のコロナウイルスの流行が今後の研究計画にどのように影響するか見通せないのが懸念材料である。こうしたことを念頭に置きつつ、現地調査が困難な状況下であるが、現時点では、アメリカ議会図書館が公開している伊能図と米軍海図の画像データを入手し、基盤資料としてGIS分析を進める方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外所蔵機関での現地調査を実施できなかったために、旅費や資料撮影・購入に関わる予算が未使用となっている。インターネットから資料でのデジタル撮影を依頼する有料サービスが整備されている所蔵機関もあるため、令和3年度は、こうしたサービスを活用しながら、現地調査を伴わずに研究を進める方法も検討していきたい。
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