研究課題/領域番号 |
20K01180
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
小原 丈明 法政大学, 文学部, 准教授 (70452258)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地籍地図・地籍台帳 / 大土地所有者 / 名寄せ / 名望家 |
研究実績の概要 |
2020年度においては,本研究課題を遂行するために設定した3つのサブテーマのうち,「大土地所有者における複数都市の土地所有実態と土地所有ネットワークの分析」のテーマ(サブテーマⅠ)を中心に研究に取り組んだ。具体的には,東京と大阪,京都における『地籍地図・地籍台帳』の資料を用いて,資料作成当時(1910年頃)の土地所有構造を解明するために,各都市の土地所有者データベース作成(大土地所有者のリスト化)の作業に取り組んだ。既存資料である『地籍地図・地籍台帳』が区画単位でリスト化されているため,まずは人物(土地所有者)単位のリスト化を図る必要があることから,名寄せ作業を行った。 ただし,名寄せ作業には膨大な時間を要した。例えば,大阪においては4区(北区・南区・東区・西区)で合計65,829筆(区画)があるなど膨大な作業量を必要とするからである。とりわけ,『地籍地図・地籍台帳』には誤記や表記ゆれ(例えば,同一人物の名前を平仮名で記している箇所とカタカナで記している箇所など)があることから,それらを補正し,同一人物を同定する作業に膨大な時間を要した。そのため,名寄せ作業の一部については2020年度内で終了せず,2021年度においても継続して行うことになる。 上述の名寄せ作業と並行して,複数都市で土地を所有する大土地所有者およびその一族の属性について,名簿資料(『日本全国諸会社役員録』など)を使用して調べた。名寄せ作業が終了していないため,こちらの作業も完了しておらず途中段階であるが,いくつかの特徴的な大土地所有者・一族を抽出することができた。 2020年度に行った事項の多くは分析・考察に至る前の作業であり,年度内には成果を挙げるまでには至っていないが,戦前期(1910年頃)の東京・大阪・京都といった大都市の土地所有構造ならびに大土地所有者の実態を明らかにする上で,重要な作業と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究実績の概要】欄でも記したように,2020年度の作業の中心は東京・大阪・京都の『地籍地図・地籍台帳』を資料として用いての各都市の土地所有者データベース作成であったが,名寄せ作業時における誤記や表記ゆれを補正しての人物の同定作業に膨大な時間を要したため,2020年度内には作業が完了できていない。ただし,研究計画における取り組みスケジュール(ロードマップ)においては,2020年度の取り組みの中心はそれら土地所有者データベース作成といった分析に至る前段階の作業であり,学会発表や論文の公表といった実績を出すことは予定していないことから,現在までの進捗状況は「やや遅れている」と判断した。 また,新型コロナウイルス感染の影響を考慮し,東京・大阪・京都以外の都市の土地所有関係資料や名簿資料を収集する調査を見合わせていたことから,サブテーマⅡの「名望家による土地所有ネットワークを媒介とする土地所有権変遷の分析」に関する調査は行えていない。その点も考慮して現状の進捗状況の評価としている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究のスケジュールとしては,まずは東京・大阪・京都の各都市の土地所有者データベース作成の作業を急ぎ継続して行うことで,研究計画の遅れを挽回することを想定している。研究計画では,サブテーマⅠについては2021年度に学会発表を行うなどの成果公表を予定していることから,それに間に合うように作業を急ぎ行う。またサブテーマⅡについても2021年度内に多くの研究を進める必要があることから,資料収集を含め,研究の遅れを挽回することに努める。 ただし,サブテーマⅡおよびサブテーマⅢ「企業家ネットワークを通じての台湾における土地所有・企業活動に関する分析」においては資料収集など現地調査を行う必要がある。とりわけ,サブテーマⅢにおいては,研究計画では2021年度内に台湾での現地調査を予定しているが,コロナウイルスの問題の状況によっては台湾での現地調査は困難であることが想定される。その場合は現地調査を2022年度に変更するなど研究スケジュールを組み直すことで対応していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度においては,コロナウイルスの感染状況を鑑み,サブテーマⅡに関する現地での資料収集のための調査を控えた。そのため,予定していた旅費や物品費(消耗品費)の使用ができなかった。そのため,次年度使用額が生じた。 2021年度においては,コロナウイルスの感染状況に留意しつつ,2020年度に実施できなかった現地調査を遂行する予定である。それにより,残額(次年度使用額)分を使用する予定である。
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