研究課題/領域番号 |
20K01183
|
研究機関 | 公益社団法人都市住宅学会(都市住宅研究センター) |
研究代表者 |
上村 要司 公益社団法人都市住宅学会(都市住宅研究センター), 都市住宅研究センター, 研究員 (30865837)
|
研究分担者 |
由井 義通 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (80243525)
若林 芳樹 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (70191723)
久保 倫子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (00706947)
上杉 昌也 福岡工業大学, 社会環境学部, 准教授 (50791886)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 空き家予防対策 / 大都市地域 / 住宅の老朽化 / 居住者の高齢化 / 地理学 |
研究実績の概要 |
前年度から準備してきた戸建住宅団地の空き家実態調査について、広島県廿日市市と東広島市、茨城県竜ケ崎市においてアンケート調査を実施した。廿日市市では販売事務所を設置した大手不動産会社の取り組みもあり、既存住宅流通が活発に行われ空き家化を未然に防ぐ効果が把握された。一方、東広島市では県公社が開発後に拠点を撤退させ、事業者による流通活動が希薄となった結果、空き家の増加が目立つ状況が把握された。竜ケ崎市では、開発時期の異なる新旧2つの住宅団地を対象に調査を実施。駐車場の設置台数や建築協定の有無、子世帯による親の住宅のメンテナンスの有無などで、空き家化の進展に差異が生じる点を明らかにした。 上記3地区の調査結果を踏まえ、次年度に実施する東京都及び大阪府、福岡県内の実態調査地区については、空き家防止につながる対策や事業、住民意識の把握がより可能となるよう、住み替え・相続に備えた相談業務や見守り事業、既存住宅流通の促進等について、調査項目の見直しを行った。 また、ジオデモグラフィックデータを用いた空き家に関するGIS分析に関しては、今後の高齢者人口の増大が予測される東京・大阪・広島・福岡の4都市圏を対象に、国勢調査の小地域集計単位に基づく将来空き家数の推定を行った。具体的には2015年から2045年にかけた空き家の増加率を推計し、郊外の空き家率は高くなる点や東京・福岡都市圏は低く大阪のインナーエリアや広島都市圏は高いといった特徴を把握した。加えてExperian Mosaic Japanのジオデモグラフィクスデータを用いて、郊外の中高年層が卓越するエリアでは現況の空き家率が低いにも関わらず高齢化により将来の空き家率が高くなる傾向を明らかにし、地区内外の住み替え需要の喚起等の対策が必要との課題提起を行った。当該内容は、令和4年3月の日本地理学会春季大会にて発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、当初想定した東京・大阪・広島・福岡の4都市圏の住宅団地に対する空き家予防対策に関する実態調査については、広島県廿日市市と東広島市、茨城県竜ケ崎市2都市圏3地区を対象に実施することができた。ただ、新型コロナウイルスが感染拡大・縮小を繰り返した影響もあり、残りの調査対象地区については年度内での実施は未達となった。残る東京・大阪・福岡の3都市圏3地区については、上記の広島県と茨城県の調査結果も踏まえ、調査項目及び調査手法の見直しを行い、年度前半にて調査が完了するよう予定している。コロナ禍の先行きは予断を許さず、実査交渉においても高齢化が進む住宅団地については、可能な範囲で対面調査を避けるなど工夫したいと考えている。 なお、コロナ禍の影響が残る点を考慮し、少なくとも今年度前半は研究に関する打ち合わせについては、オンラインでの実施を予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度であるため、進捗状況にも示したとおり、残る3地区における先導的な空き家予防対策に関する実態調査を完了する。過年度の事例調査から、特に先導性を有する自治体等の施策や事業者等のサービス内容を整理し、導入に至った背景や要因、具体的な取り組み内容、現状の成果と今後の課題について、地域特性を考慮した取りまとめを行う。実態調査では、親世帯や子世帯における空き家化に対する居住意識を把握した上で、民間事業者による高齢者の住み替え支援やUR等の近居制度、公民・民民連携による将来の相続・売却に関する相談業務や啓発媒体の作成、民事信託の活用等といった想定される事業の導入条件や普遍性を検証し、地域特性に応じた空き家予防対策の提案に資する取りまとめを行う。 また、令和3年度の試行的なGIS分析結果に基づき、住宅の所在・属性を示す建物データとジオデモグラフィックデータを用いて、空き家の住宅属性と人口・世帯動向や高齢者等の世帯属性の関係の分析を行い、将来的な高齢化率の上昇に伴う空き家率の変化を示す空き家発生予測モデルを構築する。合わせて、一部都市圏では既存住宅流通市場でデットストック化しやすいエリアを重ねることで、空き家予防対策の重点エリア選定に資する手法の提案を行う。 本研究の成果は、日本地理学会や人文地理学会、都市住宅学会等の国内の主要学会で発表及び論文投稿を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に実施予定であった4都市圏における実態調査のうち、東京・大阪・福岡の3都市圏3地区についてコロナ禍の影響により未達となり、当該地区の調査費用を令和4年度に繰り越したため。
|