研究課題/領域番号 |
20K01185
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
諏訪 淳一郎 弘前大学, 国際連携本部, 准教授 (40336904)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 音楽 / 身体 / メラネシア / ジェンダー / ディアスポラ・コミュニティ |
研究実績の概要 |
2022年9月、エスピリトゥ・サント島にあるレウェトン・カルチャル・コミュニティに滞在し、ラポールを構築し、ウォーター・ミュージックに関しては練習風景の映像撮影、および芸能の活動・由来・意味に関する関係者からの聞き書きを行った。現地の芸能として男子による民俗舞踊があったことが分かったので、これについて支度の風景と空港での上演の映像を撮影した。加えて、レウェトンが政府から分譲された廃ココヤシ園の上に造成されており、バンクス諸島内外の6つの母村を持つ共同体として生活していること、そして居住者の大半は母村ではなくルーガンヴィルなどの住民とその子供であったため、レウェトンの芸能がディアスポラ・コミュニティに再生する文化的営為であることが分かり、令和5年度に予定しているバンクス諸島での調査の重要性が明らかとなった。 レウェトンでは男子のみによる芸能も存続していることから、ウォーター・ミュージックもジェンダーを基盤とする連帯に深くかかわっていることが推測できた。そして、レウェトンに整備された男女別々の公共スペース(現在は異性が屋内に足を踏み入れることに問題ないとされる)は、伝統的なハウス・マン、ハウス・メリの対比と重なるものであり、前者では男子の芸能で衣装の着替え場所にも使用され、後者では女子が中心となり親族用の会食の準備を行っていることから、現代社会においても一定の機能を果たしていることが確認できた。このようなジェンダー間の役割の振り分けが、ウォーター・ミュージックの存続にも深くかかわっていると考えられる。 現地の言説として水(Mwerlep語nebei)が世界観のメタファーとして使用されウォーター・ミュージックの実践について外部者に説明する時に使われること、観光施設での上演について積極的に売り込まないが拒絶もしないなどの特徴も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のために受けた渡航制限および航空便の減便、および本研究代表者自身のコロナ感染による遅延とフィールドワークの期間の大幅な短縮によって、今回の調査はわずか5日間しか現地滞在時間をとることができなかった。このため、出版予定であったモノグラフの執筆に十分なデータと時間を確保することができず、令和5年度まで研究期間を延長することを止む無くされた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年6月、日本文化人類学会にて個人発表を行い、会場のフィードバックを受ける。 2023年8月から9月にかけてレウェトンとルーガンヴィルならびにバンクス諸島でのウォーター・ミュージックの実践に関する調査を民族誌映像の撮影を担当する研究協力者とともに実施する。映像人類学を専攻する女性の研究協力者1名を同行し、女性のインフォマントとの参与観察の充実を図るとともにウォーター・ミュージック上演や現地の日常行動などを民族誌映像として資料化する。 2024年4月をめどに春風社から刊行するモノグラフの初稿を完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染状況によって予定通りの調査の実施ができなかったため、科研費を1年延長して海外調査と研究成果の公表に充てる。
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