研究課題/領域番号 |
20K01187
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
田中 大介 自治医科大学, 医学部, 教授 (20634281)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 死 / デス・ワーク / 死後措置 / 超高齢社会 / 多死社会 |
研究実績の概要 |
本研究はわが国におけるデス・ワーク(death work)、すなわち「死後措置および遺体処置に関する仕事」に焦点を当て、その取り組みが今日の超高齢多死社会で果たしている役割を把握すると同時に、ライフコースの最終過程にある高齢者や、その家族や近親者などに圧し掛かる「死と看取りをめぐる生活上の困難と不安」を解消するために、デス・ワークに携わる各種事業体の可能性を探ることを主眼としている。具体的なタスクとしては「①死と看取りをめぐって今日の高齢者が直面している生活設計上の問題を把握する」「②今日のデス・ワーク事業体が、その問題に対してどのようなサービスを提供している/し得るかを捕捉する」「③フィールドワークによる調査情報と関連研究の知見を結びつけて学際的に省察し、横断的連携も含めた望ましいデス・ワークの将来像を検討する」「④本研究の最終目標が政策提案であることを踏まえて、上述①~③の成果をエスノグラフィとして総括し、調査対象を含む関係者・関係機関にその成果を還元する」という4点の作業を中心的な作業として設定している。しかし、本年度は上記の①ならびに②に関する国内各地でのフィールドワーク調査を予定していたものの、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けたことによって調査計画の修正を余儀なくされた。ただし実地調査以外の活動は概ね順調に展開していることに加え、これまでの折衝により調査協力の内諾を得た各地の関連調査先に対しても、オンライン通信その他による遠隔的調査を数次にわたり実施してインタビュー記録の蓄積に努めている。今後は新型コロナウイルスの感染状況を慎重に判断しながら、可能な限り早い段階で実地調査を行うと同時に、場合によっては調査地ならびに調査手法の変更も検討することも視野に入れて活動を展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前掲「研究実績の概要」欄に記載した通り、本年度は新型コロナウイルスの影響によって調査計画の大幅な修正を余儀なくされた。したがって研究タスクの大部分は次年度以降への繰り越しとしたものの、大阪府をはじめとする各地の関連調査先に対してオンライン通信その他による遠隔的調査を数次にわたり実施した他、断続的ながらもインタビュー記録の蓄積に努めてきており、これらの調査情報をもとにした研究成果を挙げることができた。同時に、対面コミュニケーションを必要としないオンライン調査や情報収集の調査対象を拡大するため、主に葬儀業界の人脈を中心とした折衝を地道に継続している。尚、文献資料の調査については計画開始時より継続的に進めており、諸分野の知見を摂り込みながら考察を進めている。特に歴史的な分析については今までの研究を省察できるような知見を着実に蓄積しており、今後の作業にも活かすことができる道筋をつけたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画では2021年度前期に「フェーズⅢ」として第2次フィールドワークおよび第2次インタビューを、そして2021年度後期に「フェーズⅣ」として第3次フィールドワークを実施した上でエスノグラフィの作成に着手する予定としていた。しかしながら前掲「研究実績の概要」および「現在までの進捗状況」欄に記載した通り、当初計画で見込んでいた第1次フィールドワークの十分な実施が未だ果たせていないため、今後の研究を推進するためにはまずフィールドワーク調査の実施と、その遂行を通じた調査データの充実が土台となる。ただし新型コロナウイルスの感染拡大が収束する方向に向かうか否かは本報告の時点で未だ予測がついておらず、「現在までの進捗状況」欄に記載した遠隔的調査のための手立ても同時並行的に模索する必要がある。また、現時点では感染被害が相対的に少ない地域への調査地変更なども視野に入れているが、それらの検討も含めて、当初計画通りの学術的成果を生み出す方策を新たに編成することも作業に盛り込んで研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度の当初計画で予定されていた支出の大部分は実地調査の遂行に伴う物品費と旅費であるが、前述の通り新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな制約が生じたため、本来予定されていた調査の多くを中止とすることを余儀なくされた。調査計画の中止と修正によって未使用となった費用はそのまま次年度以降に繰り越し、あらためて日程等を調整して実施する調査に充当する計画である。
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