研究課題/領域番号 |
20K01194
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
上杉 妙子 明治学院大学, 社会学部, 研究員 (90260116)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インド / ネパール / インド陸軍 / ゴルカ兵 / ゴルカランド / Gham Chhaya / デラドゥーン・ゴルカ発展会議 / インド・ゴルカ連盟 |
研究実績の概要 |
2022年度は日本国内における各種研究とインドにおける実地調査に従事した。 日本国内で行った研究の概略は以下の通りである。まずグルカ連隊を率いるインド人士官の観点について知るために、チャンドラ・ B・カンドゥリ准将の著書を熟読した。次にゴルカ兵の存在が現代インド政治においてどのような位置を占めるのかを知るために、現代インド政治やゴルカ・ランド運動についての書籍を読み込んだ。また、令和4年度科学研究費研究成果公開促進費の助成を受けて書籍『越境兵士の政治人類学―英国陸軍グルカ兵の軍務と市民権―』を執筆し、令和5年2月に刊行した。インド陸軍ゴルカ兵が使用しているヒンディー語とネパール語の学習も進めた。 2022年度後半に入ると外務省の各国に対する感染症危険情報レベルは一律レベル1となり、インドでも各種制限が緩和された。そこで2月20日から3月7日まで、インドのデリー首都圏とウッタラカンド州デラドゥーン市で面接調査及び文献調査を実施した。まずデリー首都圏ではゴルカ連隊の元指揮官であるチャンドラ・B・カンドゥリ准将の家族からグルカ連隊の士官の家族生活について話をうかがった。インド・ゴルカ連盟会長のムニス・タマン氏からは同連盟の政策や活動について教えていただいた。インド陸軍第五ゴルカ連隊元指揮官であるアショーク・K・メーター少将とも情報交換を行った。またネルー記念博物館で文献情報を収集した。デラドゥーン市では、デラドゥーン・ゴルカ発展会議の関係者に会い面接調査と本部棟の見学を行った。インド初のネパール語コミュニティ・ラジオ局であるGham Chhaya(陽光の屋根)も訪問し創設者のマドゥ・グルン氏から話をうかがった。ネパール系インド人として最高位に昇進したシャクティ・グルン中将からは少数民族兵士の立場や民族連隊について教えていただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ・ウィルス感染症の世界的流行のため、夏季に予定していたインドでの実地調査を実施することができなかった。しかし年度の後半に流行状況が収まったため、2月から3月にかけて念願の実地調査を実施し成果を上げることができた。また、文献研究によりインド陸軍ゴルカ兵の立場やインドにおける民族政策などについての知見を獲得することができた。語学の学習もある程度進んだ。最後に『越境兵士の政治人類学-英国陸軍グルカ兵の軍務と市民権ー』の執筆を通して軍務と市民権のかかわりについて思索を深めることができた。そのため「(2)おおむね順調に進展している。」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も海外調査と国内調査を実施する予定である。 海外調査としては8月に香港とネパール連邦民主共和国ポカラ市を訪問し現地調査を実施する。香港では香港海事博物館(Hong Kong Maritime Museum)を訪問しインド・パキスタン分離独立前のインド陸軍グルカ兵の活動について資料を収集する。ポカラ市ではインド陸軍第五ゴルカ連隊の退役ゴルカ兵を対象とする面接調査を実施し資料を収集する。この面接調査ではネパール出身ゴルカ兵とインド出身ゴルカ兵の関係やゴルカ兵と他民族出身士官の関係、志願の理由、ネパール帰国の理由などについて尋ねたい。年度末にはネパール連邦民主共和国ポカラ市かインド共和国を訪問して調査を再開する。ポカラ市では前述の調査を実施する。インド共和国ではウッタラカンド州デラドゥーン市か西ベンガル州ダージリン市を訪問し文献調査と面接調査によりゴルカ兵雇用についての資料を収集する。可能であれば12月にもデラドゥーン市を訪問し第五連隊の記念日の行事を見学したい。 国内では引き続きインド陸軍ゴルカ兵についての文献調査を進める。特に政軍関係や民軍関係、民族関係、保留政策についての文献を読む。インド陸軍ゴルカ連隊で使用されているネパール語とヒンディー語の学習も続ける。学術雑誌に論文を投稿することを視野に入れて執筆を開始する。また前年度に出版した著書の英語版の出版に向け準備を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
各年度に海外調査を実施することを計画し旅費を計上していた。しかし、2020年度と2021年度は、新型コロナ・ウィルス感染症の世界的流行のため外務省より渡航中止勧告が発出されており、実施することができなかった。そのため次年度使用額が生じることとなった。
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