研究課題/領域番号 |
20K01204
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
鳥塚 あゆち 関西外国語大学, 外国語学部, 助教 (70779818)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アンデス / 牧民共同体 / 南米ラクダ科動物 / 牧草地利用 / 制度と慣習の間 |
研究実績の概要 |
本研究では、ペルー南部高地の牧民共同体の事例から、南米ラクダ科動物の持続的利用の可能性と、外部からもたらされる変化に対する共同体の人びとの選択の動態を明らかにすることを目的としている。初年度はペルー共和国での現地調査を開始する予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて現地調査を実施することができず、計画していた調査は延期せざるを得ない状況となっている。 このため、今年度はこれまでの調査・研究で得られた知見から本研究課題に関連する内容として、1)共同体における牧草地利用と、2)牧民と家畜との関係についてまとめることに方向を転じ、次の調査の課題となることをより明確にすることとした。1)については、家畜の品質改良のために実施された土地区分から、国家の土地制度に関する規定と実態の矛盾、共同体内の制度的決定と慣習の矛盾、といった2つの矛盾の間の人びとのゆらぎを事例研究によって明らかにした。この成果は論文として公開した。2)については、リャマやアルパカに対する牧民の見方とそれぞれの価値基準、家畜の種間の行動特性の相違について、日常的に実践される放牧の事例から考察し、学会で口頭発表を行った。 関連する文献の収集については、牧畜文化関連の文献、生物資源利用と先住民の在来知研究に関する文献を中心に行った。次年度はこれらの資料から、他地域とアンデス牧民社会の状況を比較し分析を進める。また、インターネット上で公開されているアルパカ有色毛の回復と家畜の改良に関連する資料・論文も入手することができた。とくに有色毛の回復プロジェクトについては、今後、調査対象社会に大きな影響を及ぼす可能性のある外部アクターとして、プロジェクトの主体・方針・実践内容について考察する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた牧民共同体での聞き取りと、ペルーの繊維企業および政府機関へのインタビュー調査を、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により中止せざるを得なかったため、基本的な情報収集に遅れが見られる。他方で、本研究課題に関連する牧草地利用については、論文のかたちで研究成果の一部を公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、状況が改善しペルーへの渡航が可能になれば、予定していた現地調査を早急に開始する。国外での調査が困難な場合、日本国内の繊維企業へのインタビュー調査を中心に研究を進める。引き続き資料収集を行いつつ、渡航せずに得られる公開済み資料から、とくにアルパカ有色毛の回復についての政府機関の方針やプロジェクトの実施状況を分析する。 同時に、インターネットを通じてペルーの繊維企業や政府機関関係者と連絡を取り、新型コロナウイルス感染症がアルパカ毛の国内流通および輸出に及ぼしている影響についても情報収集に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたペルー共和国における現地調査を新型コロナウイルス感染症拡大の影響により中断したため、次年度に繰り越した。 次年度では、状況に応じて国外での調査を2回実施することとし、また日本国内での調査も当初の予定よりも範囲を広げて行い、差額分を利用する予定である。国外調査が困難な場合は次々年度に繰り越し、調査回数を増やすことで旅費に充てる。
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備考 |
鳥塚あゆち「リャマかアルパカか:南米のコブなしラクダの運命」『イベロアメリカ研究センターニューズレター』第10号、pp.22-24、関西外国語大学イベロアメリカ研究センター
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