研究課題/領域番号 |
20K01205
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
金本 伊津子 桃山学院大学, 経営学部, 教授 (60280020)
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研究分担者 |
中島 民恵子 日本福祉大学, 福祉経営学部, 准教授 (70503085)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エイジング / リターン・マイグレーション / ウェルビーイング / 文化喪失 / 日本人高齢者 / 国際移動 / 老い / エスニシティ |
研究実績の概要 |
多文化社会におけるエスニック・マイノリティの老いは、エイジズムとエスニシティから生起する社会的不利益に瀕していると指摘されている。その老いは、高齢者自身の様々な喪失と国、文化・言語、家族、社会福祉・医療システムとのせめぎあいの中にある。 海外で老いを経験する日本人高齢者は、世界のいずれのコミュニティにおいても、日本人高齢者のための住環境と日本的ケアを渇求してきた。これまでに、その日系高齢者の望みが実現に至らなかったコミュニティもあれば、運よく成功したコミュニティもあった。例え成功したとしても、継続的な運営に行き詰まってしまうケースもあり、日系コミュニティが在外の日本人・日系人の「老い」を受け止めるだけの力を発揮できない状況にあった。日本的「終の棲家」は、寂寥感以外の何者でもなかった。 しかしながら、この数年に新しい動きが生まれてきていることが明らかとなった。一つは、日本へ帰国せずとも、日本的ケアを享受する考え方の再構築である。2021年度の欧州日本人連絡会議においては、イギリス、デンマーク、オランダの日系コミュニティは、それぞれの国の福祉システムを活用した具体的な計画が共有された。もう一つは、日本が高齢者にっとっての「終の棲家」の選択と一つのなる考え方である。例えば、アメリカにおいては、日本の年金受給に関する講演会が各地で盛んに開催されている。 このように、在外日本人高齢者のウェルビーイングには、日本的環境や日本的ケアなどが重要であることが明らかとなった。この論考においては、特にリターン・マイグレーション志向(日本に帰国する、あるいは、帰国する選択肢を否定しない考え方)に注目をして、さらに考察を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度に関しては、海外に在住している日本人・日系人高齢者のインタビュー調査を予定していたが、2020年度同様、COVID-19 によって現地におけるフィールドワーク調査を実施できない状況であった。 WEB会議システムを活用して共同研究者および研究協力者とのミーティングを重ね、すでに実施したアンケート調査を活用した通時的分析をすすめ、Gerontological Society of America での研究発表を行った。また、欧州日本人連絡会や海外年金相談センターとのミーティングを行い、海外(主にアメリカ)における日本人・日系人高齢者の現状に関する情報提供を受け、インタビュー調査の協力を取り付けることができたので、2022年度においてはインタビュー調査ができる状況になると期待している。 また、これまでのフィールドワーク調査において収集してきたアーカイブのデータのデジタル化を行い、これまでのエスノグラフィーの枠組みを超えた質的データの量的分析の研究を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度においては、日本および海外におけるフィールドワーク調査の実施も可能となりつつある状況にあるので、対象としているコミュニティのいずれかにおいてインタビュー調査を進める予定である。そして、Gerontological Society of Americaにおける口頭発表を行い、研究の成果をまとめる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、COVID-19 により海外におけるフィールドワーク調査の実施が叶わなかったことにより、主に旅費分が次年度に繰り越されている。
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