研究課題/領域番号 |
20K01207
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
比嘉 理麻 沖縄国際大学, 総合文化学部, 准教授 (00755647)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 文化人類学 / 米軍基地 / 基地反対運動 / 社会運動 / 自然保護 / 人と動物の関係 / ジュゴン / 沖縄 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで申請者が沖縄本島・辺野古で研究してきた基地反対運動と結びついたジュゴン保護活動を発展的に主題化し、基地建設の進行にともなって、「政治運動」の限界に立たされた人びとが、新たに展開する<生き方としての基地反対運動>と、環境内存在すべてに開かれた「命の民主主義」を、広義の自然保護活動との関連で理解し、新たな理論モデルを提示することにある。この目的を達成するため、まず近年の基地建設計画の変遷と自然保護政策の動向を明らかにする【課題①】。次に、2019年に始まった「ジュゴンの里づくり」運動を中心に、従来のジュゴン単体の保護から、広く環境保護と結びついている基地反対運動の新たな進展と展開について現地調査を実施する【課題②】。さらに人と動物の関係論や環境・社会運動論に関する理論研究を行い、地域社会の平和の実現と人びとの<生き方>とが一体化した環境・社会運動の現代的様相をモデル化する【課題③】。
2021年度は、【課題②】に関連する現地調査と【課題③】に関連する理論研究を実施した。具体的には、【課題②】を達成するために、名護市でジュゴン保護や海洋生物保全を実践している団体や活動家のもとで参与観察とインタビューを実施した。そこでは、人間主体に限られない、広く動物まで含み込んだ、新たな民主主義が展開しており、人間や動物の<生き方>の次元で遂行される反基地・反軍事運動の把握を試みた。加えて、それらを理解するために、【課題③】で人間と非人間を共に含み込んだ社会運動や民主主義の理論を構築するために、文化人類学や近接分野の先行研究の批判的検討に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は、おおむね順調に進展している。まず、今後の調査に関して、調査地の人びとに協力していただけることになった。そのため、本研究の最終年度に当たる2022年度の研究計画 においても、課題遂行上、大きな問題はないと考えられる。 また2021度は、具体的に、上記研究課題3点のうち、【課題②】ジュゴン保護や海洋生物保全を実践している団体や活動家のもとでの現地調査、および【課題③】人と動物の関係論や環境・社会運動論に関する理論研究を実施した。その成果として、論文1本、学会発表2回を公表した。 以上の理由からおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、最終年度にあたる2022年度は、昨年度までに実施済みの【課題②】の事例の整理・分析を実施するとともに、ジュゴンや他の野生動物の保護活動と結びついた、新たな基地反対運動の展開について現地調査を継続する。それと並行して、【課題③】自然保護や野生動物との共生と結びついた基地反対運動に関する一般理論を構築するために、自然保護や環境・社会運動論に関する文献研究を実施する。それらを総合して、研究成果を広く公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で、一定期間のフィールドワークを行なうことが困難な状況があったため、調査費と謝金代を次年度に繰り越す必要が生じた。
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