研究課題/領域番号 |
20K01213
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
中村 潔 新潟大学, 人文社会科学系, フェロー (60217841)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インドネシア / バリ・ヒンドゥー / 祖先崇拝 / 共同体 |
研究実績の概要 |
本研究計画の目的は,近年のバリで顕著となってきている都市への移住と少子高齢化の帰結に対するバリの人びとの対応の事例を取り上げ,そこから現代のバリ・ヒンドゥー教徒の社会における共同性のあり方を再検討することである。二重帰属の移住者がどのような選択をするのか,インタビュー調査を通じて得たさまざまなパターンの事例を検討して共同体への帰属のあり方を調べる。また,フォーカスグループ・ディスカッションにより,当事者自身の顕在化していない動機や意思決定プロセスに着いての情報を取り出す。 これまで新型コロナ禍のためにこのような調査を行うことができなかったので,2022年度は当初計画では2020年度に予定していた予備調査をマタラム市で行い,フォーカスグループに集めるのに適した対象者の選定や,対象者の経済状況などの聴き取りを行った。 従来言われているように,バリの血縁組織(父系出自集団)は慣習法共同体(慣習村)の編成にさほど重要性を有しないと見るのは妥当であるが,その一方で,自分の「祖先 kawitan」に遡る紐帯があるから慣習村への奉仕は「負担」ではなく一種の「恩寵」であると慣習村への帰属を説明する。つまり,バリ人が自分と共同体との紐帯を語るのに,血縁的紐帯を意味する言葉で語る。この地縁と血縁の共存を血縁集団の地縁化の過程で説明することは可能に思えるが,実証は困難であり思弁の域を出ない。推測の歴史に思弁を費やすのではなく,より実りある研究方略として,バリ人を取り巻く現代的状況における二つの異なる規則の働き方を見ることにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では最終年度である2022年度に補充調査と調査対象者や現地の研究機関に調査報告をする予定であったが,新型コロナ禍のため2020年度,2021年度に臨地調査をまったく行えなかったため,3年目に調査を行うことになった。しかし,調査期間を長くとれなかったため,入手可能な関連資料の閲読と予備調査にとどまった。 計画では,1) バリBali州カランガスムKarangasem県スラットSelat郡スラットSelat行政村役場の置かれた集落; 2) バリ州デンパサールDenpasar市(移住者); 3) 西ヌサ・テンガラNusa Tenggara Barat州マタラムMataram市(移住者)の3ヶ所の調査を予定していたが,デンパサール市への移住者の調査は,ソシアル・メディアによる対話を利用するにとどまり,計画していた直接の面接による調査はスラット村およびマタラム市で行った。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では予備調査,本調査,補充調査と報告を3年間にわたり行う予定であったが,前記の理由から,最終年度に予備調査を行うにとどまったため調査計画を立て直し,2023年度に本調査を行うべく1年間の研究期間延長を申請した。2022年度の調査にもとづいてインタビュー調査のガイドラインを再考し,スラット村,バリ州都,西ヌサ・テンガラ州都の3ヶ所での調査と比較は,時間的に不可能なため,スラット出身のマタラム居住者(とくに移住後も出身村の慣習に関わり続けている者)を対象としたインタビュー調査およびフォーカスグループディスカッションに集中し,デンパサール市および出身村でのデータは,補足的な位置づけとする。 2023年度はマタラム市での本調査に加え,年度末に調査結果の報告と検討をマタラム市,デンパサール市の研究機関で行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では最終年度である2022年度に補充調査と調査対象者や現地の研究機関に調査報告をする予定であったが,新型コロナ禍のため2020年度,2021年度に臨地調査をまったく行えなかったため,費用を繰り越し,3年目に調査を行うことになった。しかし,最終年度である2022年度も調査期間を長くとれなかったため,予備調査にとどまり,研究期間を2023年度まで延長し,2023年度に当初計画の本調査を行うこととした。
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