研究課題/領域番号 |
20K01216
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池田 光穂 大阪大学, COデザインセンター, 名誉教授 (40211718)
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研究分担者 |
山崎スコウ 竜二 大阪大学, 先導的学際研究機構, 特任講師(常勤) (10623746)
井上 大介 創価大学, 文学部, 教授 (20511299)
徐 淑子 新潟県立看護大学, 看護学部, 准教授 (40304430)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スマートメディア / メディア利用 / 社会心理学 / COVID-19流行 / 遠隔教育 / 新しい孤独 / デジタル宗教 |
研究実績の概要 |
研究代表者の池田はナルシズム(ナルシシズム)化と「新しい孤独」に関する心理学ならびに精神分析からの理論について情報収集をおこなった。分担者の井上らと共同で開始したシンギュラリティと宗教の思想的関係に関する議論を、本研究課題にどのように接続するのかについて検討をした。井上は、現代社会におけるスマートメディア拡散前後のナルシズムの変容について、大学生あるいは宗教実践者を対象に実証的に調査する方向性を確認した。とりわけ欧米におけるインターネットやデジタル化と宗教の関係性についての文献を収集分析した。分担者の徐は、孤独は重要な健康問題であるとして、孤独対策担当大臣を設置した英国の動向等について調査を行った。公的なヘルスケアシステムの中に「社会的処方」を取り入れる取組についてまとめた短報を公表した。分担者の山崎=スコウは、深刻化する社会的孤立に対するアプローチとして対話ロボットの独居高齢者宅での適用を図り、効果や多様な影響を評価するため数ヵ月から1年以上に及ぶ長期実験を実施し、追跡調査を行った。軽度認知障害(MCI)の高齢者を中心に、認知症高齢者、健常高齢者を対象に対話データを収集するとともに、高齢者のロボットとの日常的、継続的対話における適応過程で精神的安定や生活習慣の変容、家族関係の変容など多様な影響や効果が見出された。スマートフォン利用おけるリモート環境情報を「コミュニケーションの切断」と理解して、COVID-19流行状況における大学の遠隔授業化を、もうひとつの「新しい孤独」を作り出す状況だと解釈して、全員の共同研究の成果となる「機械の「心」と対話は可能か?:大学教育のなかでの審問」を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度は新型コロナウイルスの蔓延と大学関係者に対する移動行動の制限の指示のためにリアルのフィールドワークの実施の中止を余儀なくされた。そのため医療人類学、宗教人類学、保健行動科学、山崎スコウはロボット知識科学の観点から、スマートフォンユーザーに関する先行研究を収集と、COVID-19流行下における学生たちの孤独と、それを補うスマートメディアの機能のポジティブ面とネガティブ面から検討するという戦術転換により、研究状況は好転した。折からデジタル宗教の論集の改訂版が出たり、保険医療活動における感染の危険のないロボットを使ったコミュニケーション状況の改善の試みや、ヘルスケアシステムにおけるスマートフォンをつかった社会的処方の促進という、比較文化現象を素材に、本研究の鍵概念であるスマートメディア導入による若者のナルシズム(ナルシシズム)化と、新しい孤独の様態に関する多様な広がりを確認しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの蔓延と大学関係者に対する移動行動の制限の指示による、大学キャンパスおける研究と教育の遠隔デジタルネットワーク化は、本研究課題がもつ、スマートメディア導入による若者のナルシズム(ナルシシズム)化と、新しい孤独の様態に関する多様な広がりを確認しつつある。そのため、最終年度である2022年度には、スマートメディアユーザーのナルシズム(ナルシシズム)化と、新しい孤独の様態が、(1)大学教育の現場、(2)宗教的活動の現場、(3)保健医療とりわけ公衆衛生やヘルスコミュニケーションの現場、および(4)人工知能(AI)やロボットを使った現場、という4つの象限のなかでどのような展開をしているのかについて、とりまとめる方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大が2021年度も続いたために、研究分担者、徐は39万円を旅費分として繰越することの連絡を研究代表者の池田は得、それを承認したため
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