研究課題/領域番号 |
20K01218
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
中 朋美 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (60707058)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 寄付 / モラリティー / キリスト教 / チャリティー |
研究実績の概要 |
令和2年度は新型コロナウィルス感染症が世界的に拡大したため、現地での調査が不可能となり、また調査対象となる教会自体の活動も一時休止するなどさまざまな形で大きな制限を受けることとなった。このため、当初予定していた現地での観察や聞き取り調査が実行不可能となり、大幅に研究予定を再検討する必要が生じた。 幸い、令和2年度5月後半から現地(アメリカ、バージニア州)の教会のいくつかとのオンライン等での連絡等を取ることができ、研究の方法の立て直しを図った。具体的には、オンラインで実施される教会の活動に継続的に出席し、教会員との各教会員との信頼関係の確立に努めた。同時に、そういった教会礼拝や活動のオンラインでの参加から、対象教会の歴史、神学的な強調点、教会関連の取り組みといった基礎的かつ不可欠な情報を得た。現在は収集した情報をもとに、各教会の特徴を整理し、コロナ禍の中での多様な価値観の折衝の様子を昨年度の事象(例えばBLMや大統領選挙)との関連で分析を行い、令和3年度以降の学会等での発表につなげるべく、研究を進めている。 また寄付やチャリティー、モラリティーといった点についての近年の学術的研究や理論についての研究についての考察を進めた。それにより、オンライン上での観察データの分析の際に重要なとなる概念などについて理解を深めることができた。今後も継続的に最新の学術的な議論の動向を注視し、この研究の対象である教会での様子やデータの分析を進めていく。 これまでの調査を踏まえ、令和3年度の夏からは、多様な価値観とどのように折り合いをつけ、宗教的な寄付やチャリティー活動を行っているのかを、過去、現在、そして今後の展望を含め、聞き取り調査を進めていく予定である。新型コロナウィルス感染症の影響により、現地調査は困難であるが、オンラインツールを駆使して実施していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大により、海外渡航が不可能になったのに加え、調査対象地での教会活動に大幅な制限、変更が加えられたため、現地(アメリカ、バージニア州)での民族誌的な調査を行うことが不可能となった。また新型コロナウィルス感染症拡大とその影響の深刻化により、現地の教会活動の制限とともに、現地での教会員、スタッフが心理的、社会的に困難な状況にあった。そのため、現地の状況把握に時間を要し、流動的また不安定な社会状況の下での研究を進めていく方策を練る必要が生じた。それを受け、当初予定していたようなスケジュールでの聞き取り調査等ができず、その分調査がやや遅れ気味である。 一方、新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、多くの教会活動がオンラインでの参加が可能となり、それにより、現地の教会の様子を重点的に観察することができ、この点では調査を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度春の段階において、研究対象地であるアメリカにおける新型コロナウィルス感染症の状況の改善の兆しが見えている。これを受け、今まで厳しい制限を受けていた対面での教会の活動の再開の検討がなされている。しかし今後、感染症が再び拡大することも考えられ、現地での調査等は柔軟に対応していく必要がある。 そういった状況を踏まえ、令和3年度の夏後半からは、教会のスタッフや教会の人々と個別の聞き取り調査を開始する。昨年度は新型コロナウィルス感染症の動向により、個別聞き取りをすることができなかったので、今年度は重点的に行う予定である。しかし当分の間は海外渡航制限等が継続すると考えられるため、オンラインで行う予定である。聞き取り調査では寄付に関連した過去の体験、教育、また具体的な慈善活動の取り組みの様子について聞き取りをする予定である。並行して、今までの教会活動の観察データを分析し、教会での寄付やチャリティー、それらと多様な文化的、社会的な価値観の折衝の様子を考察する。また調査対象教会の歴史的、社会的な位置づけについて、文献等により考察を深めるとともに、関連の施設(慈善団体など)の動向の把握を進め、令和4年度での考察の準備を図る予定である。これらに加えて、2年度は現地等の状況変化の対応に集中したため実施することができなかった学会等での発表に取り組み、他の研究者との意見交換をしつつ、研究の方向を確認する。 令和4年度以降は、新型コロナウィルス感染症の状況が落ち着き、海外渡航制限等が緩和されることが期待できる。そこで令和4年以降は、現地での調査を実施し、オンラインではなかかなかとらえることができなかった、教会とその周辺地域、地域の慈善団体等との関連について、現地での観察、聞き取りをしつつ深めていく。同時に研究成果を段階的にまとめ、学会等で発表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大のため、海外渡航といった移動の制限が課された。このため現地がまったくできず、そのために予定していた旅費やその他の費用のための助成金が未使用となった。 令和3年度以降、新型コロナウィルス感染症の状況が改善すると考えられる。渡航等が緩和され次第、現地での調査を重点的に行う予定であり、令和2年度未使用の助成金はその際の旅費、資料分析費等で重点的にかつ計画的に使用する予定である。
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