研究課題/領域番号 |
20K01219
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
高橋 そよ 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (60772829)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サンゴ礁 / 資源利用 / 民具 / 琉球弧 / 生物文化多様性 |
研究実績の概要 |
本研究は、歴史生態学的アプローチによる「漁具」の資料学的分析から、島嶼コミュニティが経験してきた環境史を構築し、社会経済的な動態に対して、島に生きる人びとは、どのように漁具をはじめとする自然利用を工夫し、生業経済や漁撈技術を変容させてきたのかを明らかにすることを目的とする。そして、琉球弧における自然と人とのかかわりの多様さを探求するための基礎的調査として、サンゴ礁資源利用の実態を資料としてできるかぎり詳細に記述し、その過程で人々の持っている海や魚の生態に関する民俗知、漁法と漁場選択、さらに漁撈活動の社会経済的諸要素との関係とその地域的な変遷を考察する。 2021度は主に鹿児島県与論島にて、1)歴史生態学的アプローチからの資料学的調査として、小規模漁業であるトビウオ追い込み漁の映像資料化、2)追い込み漁師のライフヒストリー聞き取り、3)文献調査を行った。 2021年度は、これらの研究を漁協や地元NPO、地域資料館、教育委員会など多様な専門知を持つ人々が参画する地域住民参加型研究としてのプラットフォームを構築することができた。これらの研究成果をもとに、2022年2月26日から3月10日の間、与論町役場1階ロビーにて参加型古写真展「島の自然と暮らしのゆんぬ古写真展―運ぶー」を開催した。さらに聞き取り調査より明らかになった、昭和30年代以降の島の環境と暮らしの変化を『島と語る:琉球弧・与論島』(高橋そよ編, 総合地球環境学研究所、2022年)をオープンアクセス(CCBY)の資料として刊行した。
『島と語る:琉球弧・与論島』(高橋そよ編, 総合地球環境学研究所、2022年)(https://www.chikyu.ac.jp/publicity/publications/others/#LINKAGE01)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度もCOVID-19感染拡大の影響を受け、島での長期フィールドワークは当初計画通りに行うことはできなかった。しかし、短期間ながらも、消滅の危機に瀕する小規模漁業の一つであるトビウオ漁の映像化と、野外の聞き取り調査を実施することができた。さらに、これまで構築してきた地域との信頼関係をもとに、地元の若者たちとの地域住民参加型研究として協働研究のプラットフォームを構築でき、本研究の推進力となっている。2022年度は当初計画をしていた宮古諸島・伊良部島、八重山諸島へも展開したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、医療体制が脆弱な島でのフィールドワークの実施は難しいことが予想される。このため、研究者だけではなく、多様な専門知を持つ人々との協働研究(シチズンサイエンス)として展開できるように、鹿児島県与論島で構築した市民参加型協働研究の応用展開を、本研究の対象地域である宮古諸島・伊良部島、八重山諸島でも検討したい。 また2022年度は国際島嶼学会での発表・参加を通して、世界の島嶼コミュニティにおいて、小さな生業の継承に関する研究動向の情報収集とネットワーキングを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大により、当初計画をしていた調査ができなかったため、国内出張旅費と傭船(委託費)を次年度使用とした。2022年8月に鹿児島県与論島と沖縄県伊良部島で調査予定である。 さらに、申請時には国際学会での発表を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大により2022年度開催となったため、次年度使用とした(国際島嶼学会、2022年6月クロアチア開催・発表予定)。
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