研究課題/領域番号 |
20K01220
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
多和田 裕司 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (00253625)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イスラーム / マレーシア / 世俗 |
研究実績の概要 |
2021年度においても、新型コロナ感染症の影響によってマレーシアでの資料収集や実態調査がまったく実施できなかった。よって、前年度に引き続き、これまでの研究蓄積に基づいてイスラームやムスリムがおかれている「世俗」の領域についての現状把握と、「世俗」の領域におけるイスラーム実践へのアプローチの仕方について検討した。 マレー・ムスリムにとって「世俗」の領域がとくに強く意識されるのは、(1) 非ムスリムとの「対人関係」、(2) イスラーム以外の要素が遍在する「空間」、(3) 非ムスリム、非イスラームの存在を前提とする様々な「制度」という三つである。いずれの領域も、イスラームの論理においてはすべてがイスラーム教義によって包摂されるものであるが、現代マレーシアにあっては、多民族・多宗教社会、消費社会、世俗国家といった社会的現実のなかで「世俗」の論理によって分節化されている。 本研究の目的は、これらの「世俗」の論理によって構成された日常的な経験世界を、ムスリムがどのように認識し、イスラームを実践しているかについて、具体的な相においてとらえることにある。それによって、ムスリムの実践にたいするイスラーム外部の要因の作用をあきらかにすることができ、ひいては現代社会に特有なイスラームのあり方を論じることが可能となると考えられるからである。 しかし残念ながら、上記のような理由により、実態的な資料に基づいた検討は現時点ではまったくできていない状態にある。幸いなことに2022年4月からマレーシアでは入国規制がほぼ撤廃され、自由な渡航が可能になった。本研究については、可能であれば研究の延長を視野に入れつつ、計画3年目(当初の最終年度)にあたる2022年度にできる限りの資料収集をはかりたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ感染症の世界的拡大により、2021年度においてもマレーシアでの資料収集や実態調査を実施することができなかったため、研究の進捗は計画から大幅に遅れている。2021年4月の段階では、現地調査について本務校の冬季授業休業期間や年度末期間であれば可能となるのではと予想していたが、マレーシア政府による厳密なコロナ対策(入国時の隔離および国内移動の規制)によって、本研究にとって必要不可欠な現地調査を断念せざるをえず、各種資料やマレー人ムスリムの実態にかんする一次資料を入手することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降は、当初計画の最終年度(2022年度)において補助事業期間延長承認の申請をおこなうことで、当初の2020年度から2022年度にかけての計画を1年間後ろにずらし、実質的には2022年度から2023年度にかけての研究として実施したい。マレーシア政府の新型コロナ感染症に起因する入国規制及び国内移動制限が2022年4月をもってほぼ撤廃されたことから、2022年度については本務校の夏季休業期間および冬季休業期間を利用しての現地での資料収集が可能であると思われる。補助事業期間延長承認の申請が認められたとしても、本研究は、当初の3年間の計画が2年間での実施へと短縮されるが、今後の研究進捗のためにも、現地での調査を通してできる限りの資料収集をおこなっておきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はマレーシアでの資料収集および実態調査を前提とするものである。2021年度も新型コロナ感染症の拡大に伴い、マレーシアへの渡航および現地での実態調査がまったくできなかったことから、予算の使用はなかった。2022年度(およびそれ以降)については、2022年4月1日をもってマレーシアの入国制限がほぼ撤廃されたことから、なるべく長期にわたる現地調査を実施する。なお当初の計画に沿った形での研究を実現するために、2022年度末に補助事業期間延長の申請を予定しており、補助金は(承認されれば)期間延長後の研究実施にも使用する。
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備考 |
多和田裕司(2021)「知識探訪 マレー・ムスリムたちのクリスマス」『The Daily NNA マレーシア版』(2021年11月30日)
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