2023年度には、東京都下、仙台市、名古屋市、岐阜市、四国中央市にある自治体関連部署や保護施設を訪問し、職員や施設運営スタッフへのインタビュー調査を実施した。具体的には母子生活支援施設(東京都A市)、発達障がい児とその家族の支援に携わる民間の相談支援員、社会福祉法人運営の障害者のための事業所(学習や就労サポート等)、薬物やアルコール等の依存症からの回復を支援するNPO団体、予期せぬ妊娠に直面した若年女性の支援や、行き場のない女性のために居場所を提供するNPO団体等、合計8件の調査を行った。 女性のなかでも特に若年女性の支援に目を向けることで、十代の妊娠出産からみえる暴力、家族関係、自立支援のための住居や仕事をめぐる諸問題の難しさを知ることができた。児童施設は、発達段階という一定の明確な指標や就労という具体的目的に沿ったプログラムの提供が可能である点が、行き場のない女性の保護施設との大きな違いであった。2023年度の調査先は必ずしも女性だけを対象とした保護施設ではないものの、児童施設や障害者施設と比較することで、「女性」という括りでは、年代と内容が広がり、把握しにくい「女性の保護施設」を相対化する視点を得ることができた。 成果として、2023年度出版の学会誌へ、本研究の調査データの一部を基に、「狭間」という概念を人類学的に考察した論文を投稿した。また、保護施設とケアについて考察した論文を執筆した。後者は2024年度の出版予定である。 また、研究協力者と研究会を4回(4月、5月、11月、12月/zoomおよび対面)実施し、「家族」についての各自の研究の進捗を発表し、意見交換をした。また本研究の課題を整理し、それを次の研究テーマにどう結びつけられるかを議論した。
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