人類学的関心に立つ本研究は、現代日本における女性の保護施設という社会の周辺から家族解体の先に生まれる関係性および共同性に着目するなかで、入所者の「回復」に向かう際に共通する特徴的な点として、①身体のケア、②日常的な関係性、③空間構造、という3点を焦点化した。施設での微細な日常のやり取りや行動を人類学的に考察することで、「回復」とは何かを学問的に追求した。また、保護施設が社会的な変化に応じた体制を組む必要性を示し、「家族」と「保護施設」のあいだにある、施設の空間や構造の重要性、日常的に醸造される関係性により着目することの重要さを指摘したことは、社会的な意義を持つ。
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