研究活動―1(現地調査)河辺真次(研究協力者)がペルー北部海岸地方の「海をめぐる信仰と習俗」とりわけ沿岸地域住民の世界観における海の位置づけ、信仰との関連、インカ期からの連続性をうかがわせるママコチャ信仰を中心に基礎データを収集した。海岸部の民族誌の資料はほとんど報告されていないので、きわめて重要な調査になったと思われる。河辺は、またパイタ市とヤシーア村の守護聖人祭の巡礼に注目し、各地から人が集まってきて、そこで引き起こされるモノの交換、動きの重要性に注目し、今後の課題としている。研究活動―2(現地調査)上原なつき(研究協力者)は、アレキーパ県のアレキーパ市とビラコ村において、その地域で篤い信仰を受けるホロプーナ山に注目し、その儀礼の中に海岸部で実践されてきたことを観察した。ホロプーナの事例をアンデス山間部全体にひろげることができるかどうか、今後の調査研究を俟たねばならないが、本研究の狙いからすれば、ミイラ。いけにえといった要素が海岸地域と山岳地域との関係を示唆することが分かれば十分である。研究活動―3(意見交換会)フアン・ソラーノ、ペルー国立中央大学元副学長を招へいし、中央アンデス地域、特に氏がイギリス研究者と共同研究をしたマンタロ谷における交換、モノの循環について話し合った。その結果、東亜五地域で、物々交換は急速に姿を消しているが、人々が必要とするもの(需要の中味)はだいたい同じなので、交換の復元はまだ可能ではないか、という結論に至った。研究活動―4(データの解析・全体のまとめ)加藤隆浩は、昨年度実施した調査の解析を行った。その結果、70年代までは、多くの漁民が海岸沿いを広く移動し、モノのの流通だけでなく、カルチャルブローカーとして思考、特に宗教・信仰までも広めていたことが、インフォーマントの口から聞けた。
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