研究課題/領域番号 |
20K01243
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
苑田 亜矢 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (80325539)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コモン・ロー / アングロ・サクソン法 / エドワード証聖王 / 法集成 / 写本 |
研究実績の概要 |
エドワードの法は、ノルマン征服(1066年)より前のアングロ・サクソン時代のエドワード証聖王の名を冠する法典として、ノルマン征服後の12世紀に創造(編集)された後、盛んに筆写された。現存する写本数は40点にものぼる。本研究では、それら40点の写本を主たる調査対象とし、エドワードの法が、《1》何故にコモン・ローが成立した時期である12世紀に創造されたのか、《2》以後の近世までのコモン・ロー形成期に何故に盛んに筆写されたり言及されたりしたのか、《3》如何なる政治・社会的状況の下で如何なる法的解釈を施されて神話化されていったのかを、具体的に検討することにより、形成期コモン・ローにおけるアングロ・サクソン法の意義を、エドワードの法の創造と神話化のプロセスを分析することによって、解明することを目的とする。この目的を果たすため、今年度に実施した研究の成果は、以下の通りである。 まず、(1)最近の研究動向に注意しながら、エドワードの法を含むアングロ・サクソン法に関する研究史、12世紀以降の形成期コモン・ローにおけるアングロ・サクソン法の意義に関する研究史を整理し直すことができた。 次に、本年度は、40点の写本の情報〔拙稿「『エドワード証聖王の法』の成立と伝来――手書本と刊本(12世紀から現代まで)を中心に――」『熊本法学』第147号、223-240頁、2019年〕に基づいて、写本の現物を具体的に調査する予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大のため、イギリスに出張して写本等を調査することができなかったため、予定を変更した上で、(2)イギリス革命前夜及び革命期にエドワードの法に言及したり利用したりしたコモン・ロー学者や政治家が、エドワードの法を如何に解釈し、如何に神話化したのかを解明するための前提として、イギリス革命前夜及び革命期の法制度や政治思想史に関する研究を整理することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当初予定していた国外(英国)での調査が実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度中に進めた研究史の整理に基づき、研究史上の論点を明らかにする。 また、国外(英国)で写本等の調査を実施することが可能となり次第、国外(英国)で写本等を調査することにより、エドワードの法の内容について、4つのヴァージョンの相違点や、時代による相違点を解明することに着手する。 しかし、次年度も、新型ロナウイルス感染症拡大の影響により、国外(英国)での写本等の調査を実施することができない場合は、上記の国外(英国)での調査計画を取りやめ、国内において利用可能なウェブや入手可能な刊本を活用して、可能な限り、国外(英国)での写本等の調査の前提となる情報の整理を進める。さらに、エドワードの法の刊本及びコモン・ロー学者や政治家等の著作の中で、ウェブ上で公開されているものについて、内容の検討に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型ロナウイルス感染症拡大の影響により、国外(英国)での写本等の調査を実施することができなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度は、国外(英国)で写本等の調査を実施することが可能となり次第、昨年度実施できなかった期間も加えた十分な調査期間を確保した上で、国外(英国)で写本等の調査を行ないたい。 しかし、次年度も、新型ロナウイルス感染症拡大の影響により、国外(英国)での写本等の調査を実施することができない場合は、入手可能な刊本を購入したり、入手可能な史料のデータやコピー(有料)を入手したりしたい。
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