研究課題/領域番号 |
20K01245
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
山田 洋一 京都府立大学, 文学部, 特任講師 (50866952)
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研究分担者 |
東 昇 京都府立大学, 文学部, 准教授 (00416562)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 触 / 公儀触 / 徳川領国 / 国持外様領国 / 両領国体制 / 法制史 / 国制史 / 地域比較史 |
研究実績の概要 |
本研究は、公儀(幕府)から出された公儀触(法令等)のA徳川領国(徳川家を主とする親藩、譜代、直轄地、中小外様大名等からなる領国、ア京都、山城・丹波・丹後国、イ江戸、武蔵国、等)とB国持外様領国(一郡、一国以上を領有して公儀から高い家格を認められる外様大名とその分家の各家領からなる領国地帯であるウ因幡・伯耆国、エ周防・長門国、等)の末端の村町までの伝達を分析することによって、A、Bにより構成される近世社会の体制(両領国体制)の存在を確認し、構造を明らかにする、それによっていわゆる幕藩体制の構造を明らかにする、また、触研究に情報を提供することを目的とする。 研究は3ヶ年の2年目にあたるが、初年度に引き続き実施していた、Aアの太刀宮文書(丹後国久美浜代官所郡中代等文書)の調査・収集(撮影)を終了した。並行してコロナ禍により遅れていた、その他の調査を、Aアの京都府立丹後郷土資料館・京都府精華町・南丹市立文化博物館、同イの埼玉県立文書館(2回)、Bエの山口県文書館(2回)・萩市須佐歴史民俗資料館・防府市立防府図書館において行い、領主、村の御用留を中心に撮影を行った。収集した資料から公儀触の確認、公儀触伝達経路の調査を行い、成果を得ることができた。さらに、次年度予定の太刀宮文書調査成果地域還元行事、科研費報告書の準備を行った。 また、研究分担者が中心となって、公儀触の情報データベース構築のため、御触書集成等からのデータ整理等を行った。 今年度は、遅れていた資料収集に力点を置いたが、これまでの研究の知見を活かし、国持並の宇和島伊達家領にある国境の出入りを取り締まる番所についての論考「宇和島伊達家領の樫谷御番所」(『芝家文書調査報告』)を執筆した。また、前述の太刀宮文書についての調査報告「京丹後市久美浜町太刀宮文書等調査(2)」(『京都府立大学文学部歴史学科フィールド調査集報8』)を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、公儀(幕府)から出された公儀触(法令等)の、A徳川領国とB国持外様領国の末端の村町までの伝達を分析することによって、A、Bによって構成される近世社会の体制(両領国体制)の存在を確認し、構造を明らかにする、それによっていわゆる幕藩体制の構造を明らかにし、また、触研究に情報を提供することを目的としている。この研究目的の遂行のためには、触に関係する公儀、領主(大名、旗本、直轄地等)、領地村町の記録(御用留、触留等)の資料収集(撮影)が前提となる。 研究は3ヶ年の2年目にあたるが、昨年度と同じくコロナ禍となった。そのため、初年度に引き続き実施していた、A関係の太刀宮文書(丹後国久美浜代官所郡中代等文書)の調査・収集を迅速に行い終了し、それに並行してその他の資料収集につとめ、A関係は、京都府立丹後郷土資料館・京都府精華町・南丹市立文化博物館・埼玉県立文書館(2回)、B関係は、山口県文書館(2回)・萩市須佐歴史民俗資料館・防府市立防府図書館において、領主、村の御用留を中心に調査、収集を行った。但し、収集を予定していた領主側の資料の一部が、コロナ禍のため、できなかった。そのため残された分については次年度に行う予定とし、A、Bやその他の地域も含んで、インターネット上で関係資料の情報確認、図書館等で公刊されている資料集の調査、収集(複写)等を行った。 今回収集した、触が記載される御用留・触留から公儀触の確認、公儀触伝達経路の調査を行い、ある程度の成果を得ることができた。しかし、確認しておきたい領主側の資料の未収集が影響して、結論を十分にまとめるにいたらなかった。 進捗状況はやや遅れていると判断せざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究3ヶ年の予定は、大まかに初年度目は公儀触関係の資料収集(撮影等)、2年度目は同収集資料の分析(翻刻、データベース化等)、伝達ルート(江戸城→江戸屋敷→国家老→郡奉行→代官→大庄屋→村庄屋)の分析、3年度目は研究会の実施、報告書の作成を予定していた。 しかし、コロナ禍のため、初年度は資料収集とともに、2年目の予定である資料分析を先取りして行った。2年目の当該年度は遅れている資料収集を行いながら、資料分析を進めると共に、調査等が終了した太刀宮文書の成果地域還元行事を関係機関と次年度実施予定で準備し、同じく研究報告書の準備を行った。但し、領主側の資料収集の一部がコロナ禍でできなかった。 最終年にあたる次年度は、残された領主側の資料収集、収集資料からの公儀触の確認、分析を行い、集約し、結論を得たい。また、成果地域還元行事の実施、報告書の刊行を行う予定である。 なお、これまでの調査等をとおして、研究対象地域外の公儀触に関する情報を得ることができた。肥後国(国持細川家<熊本大学永青文庫>)、阿波(同蜂須賀家<徳島大学付属図書館>)・讃岐(譜代大名等<香川県立文書館>)・伊予(国持並伊達家<宇和島市立伊達博物館>)・土佐国(国持山内家<高知県立高知城歴史博物館>)からなる四国地域、陸奥国(外様津軽家<弘前市立図書館>)、出羽国(国持佐竹家<秋田県立公文書館>)の地域の情報である。本研究は、これまで、全国の66国のうち、8ヵ国ほどしか分析ができていない。研究の精度を高めるためには、全国を対象とした調査等を行うことが望ましい。情報を得たこれらの地域(国々)についても、調査、資料収集を行いたいが、まずは、公儀触収集の可能性が高いこれら地域の研究者との共同研究(リモート研究会、共同利用の資料データベースの構築等)の可能性を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた、領主側資料の一部の調査収集が、該当地域(山口県、東京都)にまん延防止等重点措置が発令されたため、中止となり、次年度に繰り越さざるを得なくなった。次年度に、その調査等のため、山口県文書館(4万円)、明治大学中央図書館(4万円)へ出張する旅費として使用する予定である。
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