本研究は、公儀(幕府)から出された公儀触(法令等)のA徳川領国(徳川家を主とする親藩、譜代、直轄地、中小外様大名等からなる領国<京都、山城・丹波・丹後国、江戸、武蔵国等)とB国持外様領国(一郡、一国以上を領有して公儀(幕府)から高い家格を認められる外様大名とその分家の各家領からなる領国地帯<因幡・伯耆・周防・長門国等)の末端の村町までの伝達を分析することによって、A、Bによる近世社会の体制(両領国体制)の存在を確認し、構造を明らかにする、それによっていわゆる幕藩体制の構造を明らかにし、また、触研究に情報を提供することを目的とする。 研究は3ヶ年の最終年にあたり、収集した資料の分析、及び未収集の資料の調査・収集・分析を行い、領主文書を分析中であるが、村町に伝達された公儀触の分析結果(伝達結果A大公儀触・徳川公儀触、B大公儀触)により、両領国の存在の追加確認を行った。また周防・長門国における「公儀」のあり方を領主毛利家の永代家老家家臣家文書等から確認した。併せて、A関係の史料とするため調査を行った太刀宮文書(丹後国久美浜代官所郡中代等文書)の成果地域還元企画を実施した。これらの成果を調査報告書にまとめた。 地域還元企画は、関係機関(京丹後市文化財保護課等)と協働して、企画展示(テーマ「『海の代官所』と太刀宮文書」)、文化財セミナー(同テーマ)、出前講座(京都府立丹後緑風高等学校久美浜学舎2年生みらいクリエイト科「みらい探究Ⅱ」)を行った。 調査報告書は、『京丹後市久美浜町太刀宮文書(久美浜代官所郡中代等文書)・佐治家資料調査と御用留横断研究』として刊行、オープンアクセス化を行った。また同文書の調査過程等を「京丹後市久美浜町太刀宮文書等調査(3)」(本学歴史学科フィールド調査集報9』)として執筆した。撮影した画像データについては、関係者と協議し関係機関において一般公開が可能となった。
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