研究課題/領域番号 |
20K01253
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
源河 達史 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (10272410)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Summa Monacensis / Parisian School / Medieval Canon Law / Peter Landau |
研究実績の概要 |
本研究は、1170年頃から1190年頃にかけてパリとケルンで成立した一群のグラティアヌス教令集註釈書を対象とし、先行する神学文献ならびにローマ法学・教会法学文献の使用方法に着目して、成立・発展のプロセスを明らかにすることを目的とする。具体的には、対象史料において先行文献からの引用が行われる場合に、引用部分の取捨選択の仕方、複数の文献からの引用の組み合わせ方、細部における書き換え方等を精査している。これは、史料内容のオリジナリティを重視する従来の研究において見過ごされてきた点、すなわち、法学文献におけるテクストの継受方法とその変化に着目するものである。 今年度の最も重要な成果は、パリで成立したグラティアヌス教令集註釈書Summa Monacensisならびに親縁関係にある著作群、すなわちパリ学派の注釈書群について、ボローニャ学派に属する諸著作、とりわけJohannes Faventinusとの比較を通じて、パリ学派に共通のソースの存在を論証することができたことである。その成果は。論文『Summa Monacensisとその親縁関係に著作群』(Die Summa Monacensis und ihre verwandten Werke)として発表することができた。 この他、ケルン学派に属するSumma Antiquitate et temporeについても、先行する教会法学文献との比較校合を行い、その成り立ちについて具体的なイメージを得ることに努めた。当初の予定では、その成果を2つの国際学会において報告することとなっていたが、コロナ禍のため、両国際学会とも2022年度に延期された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Summa Monacensis並びに親縁関係にある諸著作については、ボローニャの教会法学文献との比較を通じて、共通のソースの存在を論証することができた。また、成立の大まかな順序に関しても、具体的な見通しがある。専門の研究誌への論文発表と併せて、ほぼ順調に進展している。未だ手付かずの課題としては、パリ学派に属すると考えられてきた著作Summa Inter ceteraの考察がある。また、ケルン学派に属する著作Summa Antiquitate et temporeについては、研究自体は進んでいるものの、学会報告、論文発表ともにできていない。それ故、全体としてはやや遅れ気味と言える。
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今後の研究の推進方策 |
上述の2つの課題について、遅れを取り戻す予定である。 まず、Summa Inter ceteraについて、果たして本当にSumma Monacensisと親縁関係にある著作なのか、ライデン大学図書館所蔵写本に基づいて精査する。 次に、ケルン学派に属するSumma Antiquitate et temporeの成立、とりわけ先行する諸著作との関係について、パリ学派について行ったのと同様の論文を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会における報告と資料調査を予定し、そのために野村財団からも併せて助成金を受けていた。コロナ禍のため、学会報告、資料調査ともに実行できず、助成金の用途を大きく変更する必要に迫られた。 今年度も、引き続きコロナ禍の影響を受け、学会報告と資料調査は難しいため、当初より国内から可能な資料収集を助成金の主たる用途とする予定である。
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