研究課題/領域番号 |
20K01262
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
松本 英実 青山学院大学, 法学部, 教授 (50303102)
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研究分担者 |
三谷 惠子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10229726)
葛西 康徳 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (80114437)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 法典化 / 法格言 / 古代法 / スラヴ法 / モンテネグロ一般財産法典 / ボギシッチ / 法言語 / ユーゴスラヴィア |
研究実績の概要 |
本研究は、法格言という表現形式の意味を、法と言語の関係、法の実効性担保という二点から考察する。古代法以来の法格言の系譜と近代化の過程で用いられた法格言とを結びつけ、法学と言語学の双方を用いながら、特に近代スラヴに現れた画期的な法典であるモンテネグロ一般財産法典を素材とすることによって、法典化と法格言の関係を、実証的に、かつ法の実効性担保の観点から明らかにすることを目的とする。あわせて、法格言の問題は同時に近代法における慣習法の位置づけとも密接不可分であることを明らかにする。 本年度は、以下の点に付き、研究代表者、分担者の方法論を明確にし、これについて英語で、海外の研究協力者と共有し得る形で公表することが出来た。 第一は、近代における法言語の形成に関する比較の方法である。セルビア、クロアチア、ダルマチア、モンテネグロにおける法言語形成の過程と日本におけるそれとを比較することが、近代語の統一の問題、法言語における外国語の借用の問題等をはじめとして、有意義であることが明らかになった(Mitani, Formation of legal language in the nineteenth-century South Slavic lands and Japan)。 第二は、上記のように南スラヴ地域と日本を、特にその近代法典化過程に注目して並列し比較する際に、「古代法」の概念、その背後にある19世紀の古代(法)研究が媒介項となるという方法論的認識が獲得された。特にヘンリー・メインにおけるスラヴ法と日本法への注目、これを受けたモンテネグロ法典起草者ボギシッチと日本民法典起草者穂積陳重の方法論の比較検討は有意義である(Kasai, Bogisic and 'Ancient Law')。 第三は、上記比較の媒介項として西欧諸地域を設定し(例えばフランス)、三者をめぐる人的交流関係を分析する重要性である(Matsumoto, Bogisic and his unrewarded contribution to the Modern Japanese Civil Code)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本共同研究の基礎となる、各研究者の基本アプローチについて英語論文のかたちでそれぞれ公表することができた。コロナ禍において、予定していた研究会を開催することができなかったため、この点を新年度には補いたいと考えるが、「おおむね順調」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、コロナ禍の下、健康状態に細心の注意を払う必要があり、予定していた研究会を開催することができなかったため、2021年度は共同で推進する場を積極的に設定したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナ禍により、また健康上の理由により、予定していた研究会を開催することができず、旅費を用いなかった。またコロナ禍によるリモート対応も十全に行うことができなかったため謝金の支出が予定よりも少なかったため、残額が生じた。2021年度はこの分を挽回すべく、共同研究を推進し、リモートでも効率の良い共同研究体制を整えたい。
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