研究課題/領域番号 |
20K01264
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
松島 裕一 摂南大学, 法学部, 准教授 (70582782)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フランシスコ・スアレス / 法解釈理論 / 法思想史 |
研究実績の概要 |
近世ヨーロッパの法解釈理論では、解釈技法は「説明的解釈」「拡張解釈」「縮小解釈」の3種類に分類されることが多いが、今年度はフランシスコ・スアレス『法律および立法者たる神についての論究』(以下、『法律論』)第6巻第1章に依拠して、当時の説明的解釈(interpretatio declarativa)なる概念の解明に努めた。 具体的には、同時代のドイツの法学者ヴァレンティン・フォルスターの『解釈者、あるいは法の解釈について』第2巻第4章「法の説明的解釈について」との比較を交えつつ、スアレスの説明的解釈論の特徴として次の3点を指摘した。①従来の法学説とは異なり、主意主義と主意主義の哲学史的背景を踏まえて、法律の理性(ratio)と意志(voluntas)が明確に区別されていること、②スアレスにおいては理性ではなく意志が法律の内在的形相とされていること、③それにもかかわらず、法律の解釈の場面においては法律の意志よりも文言(verba)を重視すべきとされていること。以上の成果をまとめ、『法の理論39』(成文堂)に拙稿「法律の精神について:スアレス『法律論』第3巻20章と第6巻第1章を中心に」を公表した。 また、説明的解釈を考察するうえで拡張解釈(interpretatio extensiva)との相違を把握する必要があるため、『法律論』第6巻第4章までの試訳はほぼ終了している。次年度以降、訳文を検討したうえで、当初の計画どおり、研究資料として公表できればと考えている。 その他の付随的な研究実績として、法哲学の教科書(那須・平井編『レクチャー法哲学』)において、中世法学の解釈概念などに言及しながら現代の法学方法論の概要を解説した。さらに、法思想史にかんする簡単な読み物(法学教室2020年9月号)を執筆し、法思想史の教科書の著者としてオンラインの合評会に参加した(法理学研究会12月19日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、今年度は「説明的解釈」にかんする論文を公表し、スアレスの法解釈理論の一端を明らかにすることができた。また、次年度の「拡張解釈」にかんする論文執筆に向けて、スアレス『法律論』やバルトルスらの註釈書をおおむね順調に読み進めている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では次年度に海外出張を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の現状に鑑みて、おそらくその実施は著しく困難であると思われる。それゆえ、次年度も今年度と同じく、スアレス『法律論』およびその関連文献の読解に集中する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費については、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、今年度の国内の学術大会・研究会がすべてオンラインになったため。また、物品費の一部については、今年度の研究が既存の物品(とりわけパソコン)でさしあたり間に合ったため。次年度に、必要な物品や資料収集の費用等に充てる予定である。
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