研究課題/領域番号 |
20K01266
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 裕一 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (60376390)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 天皇制 / 国体論 |
研究実績の概要 |
今年度は、前年度に引き続き資料収集およびその分析を行った上で、戦前の国体論がはたして戦後の日本に引き継がれているのか否かを検証することを主たる課題としていたところ、かかる課題に関連する研究成果を執筆し、その内のいくつかを公表することができた。これらの研究成果は、その内容に従って、大きく3つに分類することができる。 まず一つ目は、戦前から戦後にかけての日本憲法学説史を取り扱った諸論考であり、とりわけ「近代日本と『個人の尊重』」・「『東大学派』の系譜――法と政治の間で」・「台北・京城・天皇制」の3本が本研究との関係では重要である。このうち、後2者は宮沢俊義や中村哲を始めとする憲法学者たちの言説を対象とするものであるが、そこに伏在していたのは、日本の憲法学における「国民国家的なるもの」という論点であった。それに対し、その論点を戦後の憲法学を対象として取り上げることで、戦前と戦後を通底する「近代日本」における憲法学の特質を炙り出そうとしたのが最前者である。なお、「戦時下における学問の自由」と「日本憲政史における学問・教育の自由と課題」は、日本憲法学における戦前と戦後の連続性という課題を「学問の自由」という特定の主題に即して論じたものであるため、ここに挙げておく。 次いで二つ目は、憲法第1章に関する判例研究であり、『精読憲法判例』という演習書に寄せた「天皇制」がそれに当たる。 最後の三つ目は近代日本に係る政治学的・社会学的研究に関連するものであり、「日本国憲法のアイデンティティ」という連載の企画として行われた2本の座談会がこれに該当する。これらはいずれも、近代日本の政治や社会に関する憲法学の射程を超えた学際的な研究であるが、憲法第1章の解釈論に資するために近代日本の思想史的前提を解明することを主たる目的に据えている本研究にとって、参考となる多くの示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、「研究成果」に列挙したように、研究成果については順調に公表することができたものの、他方で、「次年度使用額が生じた理由」で述べるように、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い遠方への出張が依然として困難であったことから、道外における資料収集や研究者との打ち合わせについては、前年度に引き続き、必ずしも順調に行うことができなかった。そのため、当初の研究目的からはやや遅れていると評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
状況が許せば、今年度は道外への出張を積極的に行い、資料収集や打ち合わせを進めることで2年目の遅れを取り戻したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、道外における研究打ち合わせや資料収集を当初の予定通りに行うことができなかった。そのため、残額については、主として道外への出張に充当したいと考えている。
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