本研究は、憲法パトリオティズムの日本における応用可能性を検討することにある。憲法パトリオティズムは、憲法上の普遍的価値である自由や平等などに対する愛着と定義し得るが、ユルゲン・ハーバーマスによる議論で有名になり、2000年代以降、ドイツ固有の議論から離れ、政治哲学分野において社会統合の一つのあり方を示すものとして注目されるようになった。しかし、どのように応用可能かについては十分に解明されておらず、日本においても議論の蓄積が十分とは言えない状況にある。 今年度は、昨年度に引き続き、文献研究を主として、ドイツでの最新の議論を検討するとともに、日本における応用可能性について、憲法解釈、社会統合と天皇制、平和主義、憲法教育、市民的不服従の5領域について研究を遂行した。加えて新型コロナウイルス感染拡大の下における法的諸問題についても検討し、とりわけ教育を受ける権利をめぐる諸問題については論考を発表し、その延長でICT教育などの先端技術導入による教育上の諸問題についても射程を広げて検討した。 また研究成果全体の公表の準備を実施し、日本教育法学会においても総会報告「教育判例の動向と理論的視座」を行った。さらに南アフリカ共和国のヨハネスブルグで開催された国際憲法学会に参加し、当該テーマについて、世界各国から集まった憲法学者と意見交換を行った。 最終的な研究成果として、「憲法パトリオティズムと現代の教育」(日本評論社)を刊行した。
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