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2021 年度 実施状況報告書

社会のデジタル化に対応した租税実体法および租税手続法のあり方に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K01278
研究機関早稲田大学

研究代表者

渡辺 徹也  早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10273393)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワードデジタル課税 / 国際的最低税率 / BEPS 2.0 / 国際的租税回避 / デジタルプラットフォーム / 法人税 / 国際課税
研究実績の概要

2021年10月、OECDにおいて約140カ国からなる包摂的枠組加盟国は、国際課税における画期的な合意に達した。すなわち、これらの加盟国が「経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対処するための二本の柱からなる解決策に関する声明(Statement on the Two-Pillar Solution to Address the Tax Challenges Arising from the Digitalisation of the Economy)」に参加したのである。
本年度の研究では、これら合意に至る経緯をフォローすると同時に、合意内容の検討を行った。合意に至った。とりわけ、OECDとアメリカとの関係に関する考察が重要であった。合意はアメリカを取り込むことで実現したといえるからである。
OECDの議論は、アメリカの税制改正案に影響を与えている可能性がある。例えば、UTPRに類似するSHIELD(Stopping Harmful Inversions and Ending Low Tax Developments)(Undertaxed Payment Rule)という制度において、ミニマム税率に達しているか否かの計算には、財務会計データが使われることになっている。この点について、アメリカはOECDの基準を意識しているようにみえる。
また、OECDにおいてアメリカの主張通りに事が運んでいない部分がある。アメリカからすれば、第1の柱は、ヨーロッパの製造業を対象外としつつ、アメリカのデジタル企業を狙い撃ちする制度として映る。しかし、グローバルな最低税率導入のために、アメリカは第1の柱における利益Aに対する課税を受け入れなければならなかった。そうであるにも拘わらず、アメリカが第2の柱で確保できた最低税率は15%であって、当初目指していた21%ではなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2021年はOECDにおいて約140カ国からなる包摂的枠組加盟国が国際課税における画期的な合意に達した年となった。これらは大きな動きであるが、経済産業省(2021年5月14日)や経団連(2021年4月13日)の研究会などで報告することで、自分の考えを整理することができた。前者のタイトルは「国内での海外デジタル企業との公平な競争環境に資する税制について」、後者は「デジタルサービス税について」である。
また、税法学586号に「企業会計・会社法と法人税法に関する一考察」という論文を執筆した。そこでは、法人税法が種々の局面で企業会計や会社法に依拠してきたという側面から、経済のデジタル化に伴う課税上の課題に関するOECDの議論だけでなく、アメリカの新政権における帳簿所得への課税提案、みなし配当に関する令和3年3月11日最高裁判決(国際興業管理事件)を取り上げた。いずれも法人税法における最近あるいは直近の課題であり、研究課題を遂行するために必要な作業であった。
OECDにおける合意を経て、2022年度以降は、条約の作成・締結、国内法の整備という段階に入ってくる。これらの問題についても、既に資料収集を開始している。
さらに、シェアリング・エコノミーおよびギグ・エコノミーに関する課税についても、論文作成の準備に入った。

今後の研究の推進方策

日本は、第1の柱について2022年に多国間条約を策定し、2023年に実施することを目指し、第2の柱について、2023年度税制改正で法案成立を目指すという予定で動いている。
ただし、これは予定であって、その通りになるとは限らない。アメリカのバイデン政権は不安定であり当初の税制改正法案の成立が危ぶまれている。ヨーロッパをはじめ各国はコロナ禍のため財政出動を行い、それに伴って税収が不足している。したがって、デジタルサービスタックス等の一方的措置を取り下げるかどうかわからない。また、途上国は国連を使った合意内容の巻き返しを狙っている。
これらを前提に、引き続き2022年度の国際情勢をフォローし、合意実施に関する検討を続ける必要がある。
上記に加えて、2022年度は、シェアリング・エコノミーおよびギグ・エコノミーに関する課税問題の検討を行う。具体的には、ギグ・ワーカーが得た利益の所得分類をこれまでの裁判例との比較において検討する。その際には、給与所得に関する非独立性と従属性の観点から考察する。また、ギグ・ワーカーの申告漏れという問題を取り上げ、それを防ぐためにプラットフォームからの情報収集方法について検討する。その際には、OECDのモデル・ルール(OECD (2020), Model Rules for Reporting by Platform Operators with respect to Sellers in the Sharing and Gig Economy; OECD (2021), Model Reporting Rules for Digital Platforms: International Exchange Framework and Optional Module for Sale of Goods)等を参考にする。

次年度使用額が生じた理由

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  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 家屋に係る固定資産税と建築当初の評価の誤り2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺 徹也
    • 雑誌名

      地方税

      巻: 73巻1号 ページ: 2-9

  • [雑誌論文] 租税法への招待2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺 徹也
    • 雑誌名

      法学セミナー

      巻: 804号 ページ: 45-51

  • [雑誌論文] 株式対価M&Aとしての株式交付と課税2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺 徹也
    • 雑誌名

      税務事例研究

      巻: 186号 ページ: 28-51

  • [雑誌論文] 法人が資本の払戻しを行った場合における法人税法施行令23条1項3号の法適合性2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺 徹也
    • 雑誌名

      ジュリスト

      巻: 1567号 ページ: 131-134

  • [雑誌論文] 企業会計・会社法と法人税法に関する一考察2021

    • 著者名/発表者名
      渡辺 徹也
    • 雑誌名

      税法学

      巻: 586号 ページ: 685-704

  • [学会発表] 国際課税を巡る現状と課題ー経済のデジタル化に伴う課税上の課題への対応-2021

    • 著者名/発表者名
      青山慶二、木原大策、幸福健太郎、渡辺徹也
    • 学会等名
      租税研究協会(第73回大会)
    • 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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