本研究は、犯罪やテロ防止といった領域での、国家賠償責任と被害者救済制度について、フランス行政判例との比較という手法によって研究するものである。 本研究の研究第3年目においては、以下の点につき研究を行った。 まず、第1・2年度に引き続き、フランスにおける行政判例の研究を行った。第1年度・第2年度においては、テロ防止権限の不作為や一定の犯罪行為の防止権限の不作為に関するフランス行政判例の研究を行ってきた。第3年度については、これまでの研究で扱ってきた分野だけではなく、国家が一定の加害行為を防止しなかったことを理由とする行政判例として、アルジェリア戦争後のテロや犯罪行為の被害に関する事例にも対象を拡大して、行政判例の整理を進めた。これらの分野は、フランスにおいても高い関心が持たれている分野であり、特に現在のマクロン政権においては、政治的に重視され、立法的にも様々な救済がなされている。当該分野は、これまでのテロや犯罪行為の防止に関する不作責任における行政判例と一定の共通点が見られる。そこで、当該分野も含めて、フランス行政判例における犯罪やテロ防止に関する不作為責任における法理の研究を行ってきた。 次に、個別立法による救済制度についてであるが、第2年度に引き続き、テロ被害に関する「テロ及び他の犯罪被害の被害者補償基金(FGTI)」以外の基金による救済制度として、医療事故関係の救済基金の一種である(ONIAM)についても研究を行った。加えて、第3年度は上記の分野に研究対象を拡大したこともあり、アルジェリア戦争後のテロ等の被害に関する立法的な救済についても、研究を行った。 最後に、わが国の国家賠償に関する研究につき、犯罪の防止権限の不作為に関する判例や規制権限の不作為に関する判例の整理・分析を引き続き行った。
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