国民へのリスク防止義務を行政が負う機会は、行政国家の拡大により、増加する傾向にある。このようなリスクを防止する義務への違反が認められる場合、国家賠償責任が生じることは、わが国のみならず、フランスにおいても、広く認められる現象であると思われる。したがって、様々な行政分野について、行政の権限不作為に関する研究が行われており、本研究は、これらの個別行政分野の研究の一つであるといえるが、犯罪やテロ防止というリスクに関する不作為責任という新たな行政領域の研究である。さらに新たな領域というだけではなく、人権保障と行政のリスク管理の調整という重要な問題についての研究としても意義を有する。
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