2022年度は、前年度までの研究成果を引き継ぐかたちで、議会内野党(議会内反対派)の憲法規範論的な位置づけについて、本研究なりの一定の結論を示すことを目指した。前年度と同様に、ドイツ憲法学の理論と実務をまずは内在的に理解した上で、日本との比較対象の素材とするアプローチを採った。 そのための素材として、ドイツにおける「反対派条項」(憲法典上の議会内反対派の規律)をとりあげた。具体的には、①1970年代から現在に至る反対派条項をめぐる解釈論・立法論上の論争の展開を「制度アプローチ」対「機能アプローチ」という対抗軸の下で跡付け、②ドイツの州憲法における反対派条項の導入経緯や規律状況を整理し、③反対派条項の解釈上の諸問題について、実際の憲法裁判上の紛争事例(ザクセン=アンハルト州憲法裁判所の1997年の判決と、連邦憲法裁判所の2016年の判決[いわゆる反対派権判決])の詳細な分析を行った。③の作業を通じて議会内反対派を憲法で規律することの困難と課題が明らかになると同時に、その(一定の)必要性・可能性も確認できた。さらに④近年の政党多極化(とりわけAfD[ドイツのための選択肢]の国政参入)やコロナ・パンデミック下の議会運用の下での憲法状況や学説動向を踏まえた「議会内反対派」の「現段階」を確認した。また⑤これらの研究で得られた知見をもとに、日本の学説状況に対する分析も一定の範囲で示した。 研究の成果については、立命館法学に3回連載となる論考(「議会内反対派の憲法化(1)~(3・完)」)を公表することができた。また、この作業の付随的成果を発展させるかたちで、コロナ下の「オンライン議会」の状況に関する論考や「憲法と政党」を原理的に問い直す論考を執筆することができた(論文名・掲載媒体などは後述の業績一覧参照)。
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