研究課題/領域番号 |
20K01282
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
倉田 玲 立命館大学, 法務研究科, 教授 (20368012)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 棄権の自由 / 選挙権 / アメリカ / 選挙人名簿 / 強制投票 |
研究実績の概要 |
論文(単著)「棄権の自由」立命館法学393・394号(2020年5・6号)278頁以下(2021年3月)により,選挙において投票しない自由の保障を意味する狭義の自由選挙の原則について,衆議院議員選挙法の時代から代わり映えしない公職選挙法の規定や強制投票制度の採用可能性を留保している憲法学説の含意を探究するために,主要には交付申請書にも記載していたアメリカ合衆国最高裁判所のヒューステッド対A・フィリップ・ランドルフ・インスティテュート事件判決(2018年6月11日)の判旨を背景の消息から読み解き,1993年全国選挙人登録法の棄権条項の解釈を焦点として,棄権の反復の事実が転居や死去の徴標や徴憑とみなされて選挙人名簿からの抹消につながる制度の運用実態を考察した。小稿の本文の結びに近いところに,「このような外国の判例を参考にして推察すると,少なくとも法制度の運用の次元には定着している棄権の自由にも,もしや間接的な制約の可視化される場合があるのかもしれない」(290頁)と記しているのが,所期の研究の目的を遂行した今年度の研究実施計画の暫定的な到達点である。 なお,今年度の研究業績のうち,市川正人・倉田玲・小松浩(編)『憲法問題のソリューション』(日本評論社,2021年3月)157頁以下の「民主主義:臨時国会の召集決定をめぐる民主主義と司法審査」や「参院比例選の特定枠制度の合憲性(最新裁判例研究/憲法)」法学セミナー795号(2021年4月号)118頁(2021年3月)は,いずれも上掲の論文と同時期に執筆して公表した小稿であり,それゆえ内容にも若干の接点や関連がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は予期していなかった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の地球規模の蔓延状況(pandemic)により,交付申請書にも研究実施計画の重要な部分として記載するかたちで予定していた海外渡航による現地調査を見送らざるを得ない状況が続いており,その成果に期待していた部分の研究実施計画に重大な遅滞が生じている。既知の現地研究者等とは遠隔通信の方法により交信しているが,新たに聴取先を得ることはできないでいる。このような事情により,公刊物の渉猟を中心とする方法に大きく切り替えて研究計画を遂行しているが,やむなく最新の資料に接触することのできない状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書にも研究実施計画の重要な部分として記載していたアメリカ合衆国のニュー・ジャージー州立ラトガース大学法科大学院やオーストラリア国立大学法学部への訪問による現地調査,現地研究者等との研究会等による意見交換を,まずは一方への訪問だけでも実現して,願わくは新たに聴取先を開拓したい。しかしながら,新型コロナウイルス感染症の地球規模の蔓延状況は,いまだ終息への収束が着実には見通せない状況にあり,やむなく再度の断念を余儀なくされることも予想されるから,その場合にも研究課題の遂行に重大な遅滞をきたすことのないように,初年度と同様の方法により進捗をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付申請書の研究実施計画の重要な部分として記載していた外国への渡航による現地調査が,当初は予期していなかった新型コロナウイルス感染症の地球規模の蔓延状況により,断念することを余儀なくされたため,予定していた旅費が支出されなかった。その一部は,公刊物の取得を充実させるために執行したが,研究実施計画そのものを根本的に変更することは好ましくないので,次年度には安全な渡航が可能になることに期待しており,そのために使用することを計画している。
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