研究課題/領域番号 |
20K01289
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
渡辺 康行 一橋大学, 大学院法学研究科, 特任教授 (30192818)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ドイツ連邦憲法裁判所 / 法の支配と司法権 / 裁判官に懲戒処分 / 裁判官弾劾制度 / 三段階審査 / 比較較量論 / 裁判官研究 / 憲法訴訟論 |
研究実績の概要 |
2022年度の最大の成果は、『憲法裁判の法理』(岩波書店)という論文集を公刊できたことである。第1部「ドイツにおける憲法裁判権」、第2部「法の支配と司法権」、第3部「憲法訴訟」、第4部「裁判官」からなる同書は、単なる既発表論文の集成ではなく、現時点においてかなり加筆・修正を加えているため、私の見解を体系的に示すものとなった。同書は、おそらく今後の学界に対して影響力をもちうる業績になったものと思われる。 また共著の体系書の改訂版も公刊できた。『憲法Ⅰ 基本権〔第2版〕』(日本評論社)である。同書は、現在の日本憲法学が提供している代表的な体系書の一つだと思われるが、7年ぶりの改訂であるため、かなり大規模な加筆・修正を行った。本研究課題は、「日本型憲法訴訟論の構築」であるが、憲法訴訟論は、訴訟技術論にとどまるものではなく憲法上の権利論と一体となって初めて意味がある。そのためこの体系書の改訂作業によって得たものは大きかった。 以上のほか、個別の論文もいくつか公表した。「憲法判例における比較較量論」と「憲法判例における比較較量論の諸相」は、姉妹編である。前者は法令の解釈・適用や事実行為としてなされる個別の国家行為の憲法適合性を審査する場面、および基本権法益相互が衝突する際に、その調整が必要となる場面に関する比較衡量を扱った。後者は、法令の憲法適合性審査の場面における比較較量を扱っている。両論文を合わせて、判例が採用している比較較量論の全容を明らかにしている。「地方議会議員に対する出席停止の懲罰と司法審査」は、岩沼市市議会議員出席停止事件に関する大法廷判決の評釈である。これにより、司法権に関する研究も進展させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、『憲法裁判の法理』という論文集を公刊することができた。同書公刊のための準備作業によって、自身の見解を見直すことができた。また論文集という形で公刊することによって、読者の目に届きやすくなったと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に出版した『憲法裁判の法理』に収録した憲法訴訟関係の論考は、三段階審査が当てはまる防御権に関する判例を素材としたものだった。平等原則や立法者による制度構築に依存する権利にかかわる論考についてはさらに別著を予定しているため、次の論文集の公刊に向けた準備を進めていきたい。とりわけ家族と憲法に関する論考を書き足すことが必要だと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、学会や研究会、研究打ち合わせなどがオンラインまたはハイブリッド形式になったため、予定していた旅費の支出がなかった。2023年度以降は対面での会合が増加するため、その経費に支出する予定である。とりわけ、2023年4月から大阪経済法科大学法学部に勤務することから、資料収集や研究打ち合わせなどのため東京への往復旅費の支出が増加するものと思われる。
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