研究課題/領域番号 |
20K01306
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
張 博一 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (70634020)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デジタル貿易 / デジタル課税 / プライバシー保護 / データの自由流通 / 米国・メキシコ・カナダ(USMCA)協定 / 地域的な包括的経済連携(RCEP)協定 |
研究実績の概要 |
デジタル経済の発展は、WTO発足時には想定し得なかった環境変化である。この分野の国際規範はなく、各国が適正と判断した規制を導入する中、安定した取引が行われるためには、関連ルールの国際的な調和を図ることは必要不可欠である。 しかし、デジタル分野において国際競争力が高い企業を擁する米国は、デジタルプロダクトに対する無差別待遇の適用や技術の強制移転の禁止を求めるなど、政府による規制介入を最小限に抑えることを主張する。このほか、消費者の基本的人権に最大の重きを置くEU、欧州型の法整備に動くASEAN諸国、独自のプラットフォーム構築に意欲を示すインド、インターネット主権という概念の下、政府によるデジタル空間への介入を正当化する中国など、各国が相次いでルール策定に向けた提案を公表する中、交渉姿勢の違いも鮮明になっている。個人情報保護の機運の高まりやセキュリティ上の懸念などを主な理由に、デジタル関連法規の導入が増えつつある。また、デジタル課税など、国際議論の決着を待たずに措置導入に動くケースもある。 研究初年度である今年は、まず、G20での「データの自由な流通確保」、OECDでの「デジタル課税ルール」、APECでの「プライバシー保護の調和」など、様々なフォーラムにおける議論、さらに、有志メンバーは交渉に向けた論点の整理が現在行われて、具体的な文言調整が進んでおり、各国の主張を整理し、論点の洗い出しを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大により、当初予定していた国外、国内出張、インタビューを実施することができなかった。来年度は、これまでに行った基礎的研究を踏まえて、より広範な学術資料を収集し、議論の精緻化を図る。
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今後の研究の推進方策 |
FTAデジタル関連ルールでの内容面の拡充が進む一方で、そのまま多国間ルールに転用される可能性は低いと考えられる。ルールの土台は確立される一方、条項を共通化する動きはほとんどみられず、国内規制の導入理由や程度が国によって異なり調整が進みづらいためである。当面WTOにおける各種提案を軸に、均衡点を探る必要がある。 そこで、引き続き国際的な議論の進捗を追いながら、①デジタル・プロダクトへの関税不賦課、②電子的に送信されるデジタル・プロダクトの無差別待遇、③越境データ移転の制限やコンピュータ関連設備の設置・利用要求を禁ずる最先端の約束の確立、④ソースコード及びアルゴリズムの政府による開示要求を禁止する規定の導入、⑤第三者のコンテンツに対するオンライン・プラットフォームの知的財産権以外の民事責任を制限するルールの確立、の5つのテーマに分けて、具体的な規定の中身の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大により、当初予定していた国外、国内出張、インタビューを実施することができなかった。来年度は、これまでに行った基礎的研究を踏まえて、より広範な学術資料を収集し、議論の精緻化を図る。
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