研究課題/領域番号 |
20K01307
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤澤 巌 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (20375603)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 干渉 / 武力行使 / 国際法 |
研究実績の概要 |
要請または同意による干渉には、平和維持活動などの安保理の行動と並行的に展開するものがある。第1年目は、これらの干渉の諸事例を取りまとめ検討した。具体的には、米国のアフガニスタン駐留(2003)、米国によるイラク駐留(2007)、オーストラリアによる東チモール介入(2006)、フランスによるコートジボワール介入(2011)、フランスによるマリ介入(2013)などを対象に調査を行った。コロナ禍により海外での調査が不可能となったので、文献の収集と分析を中心に行った。 たとえばマリの事例では、安保理は、マリ北部におけるテロ組織および犯罪ネットワークの活動が地域に対する深刻かつ緊急の脅威であることを認め、マリの事態を平和に対する脅威と認定し、国連憲章第VII章に基づきアフリカ諸国による支援部隊(AFISMA)に武力行使を授権した(安保理決議2085)。しかし、AFISMAの展開が始まる前に、反政府勢力が大規模な攻勢を開始した。危機に陥ったマリ政府は、フランス政府に軍隊派遣を要請し、フランス政府は当該要請を法的根拠としてマリ内戦に軍事介入した(S/2013/17)。 安保理は、このフランス軍の介入を「テロリスト、過激派および武装集団の南部への攻勢を阻止するため」の迅速な行動として歓迎した(安保理決議2085)。さらに安保理は、マリ国連平和維持活動(MINUSMA)の活動を支援するために武力を行使する権限をフランス軍に授権した(安保理決議2085)。こうしてフランス軍は、一方でマリ政府の要請に基づき反テロ作戦を実行するとともに、他方で安保理の授権に基づき国連活動を支援するという、二つの役割を負うこととなっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基本的には研究計画に沿って研究が進捗している。 しかし世界的な新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、第1に海外における調査が不可能となったこと、第2に国際的な輸送の遅滞により文献資料等で2020年度末までに入手できなかったものが生じたこと、という2つの事由により、当初の予定通りには研究を進めることができなかった部分があった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も新型コロナウイルスの感染拡大の影響で当面は海外渡航は難しいと思われるので、今後は、海外での調査に代えてインターネットや文献を通じた調査を行うことによって研究を推進し、所期の研究目的を達成していく。 具体的には、第1年目に扱われなかった要請または同意による干渉の諸事例を検討し、既存政府の「要請」が干渉の正当化根拠とし主張されているか、あるいは既存政府の「同意」で十分とされているか、解明する。具体的にはエチオピアのソマリア介入(2006)、ケニアによるソマリア介入(2011)、エジプトによるリビアのIS攻撃(2015)、米国によるリビアのIS空爆(2016)、サウジによるイエメン介入(2015)などを対象に、文献調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的拡大により海外からの資料・書籍の購入に支障が生じ、2020年度末までに納入できなかったものが生じたため、82,427円の次年度使用額が生じた。 2021年度については、これら資料・書籍も納入される予定であり、次年度の直接経費500,000円と合わせて582,427円を、資料・書籍の購入により物品費として支出する予定である。
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