研究課題/領域番号 |
20K01307
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤澤 巌 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (20375603)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 干渉 / 武力行使 / 国際法 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、具体的事例において、「要請」または「同意」の必要性についてどのような主張がなされたかについて、ICJの裁判例、エチオピアのソマリア介入(2006)、ケニアによるソマリア介入(2011)、エジプトによるリビアのIS攻撃(2015)、米国によるリビアのIS空爆(2016)、サウジによるイエメン介入(2015)などを対象に、国家実行を検討した。干渉の目的を解明する際には、「要請」と「同意」の区別が重要である。もし干渉が被干渉国の安全保障上の利益の実現を目的とするなら、干渉の必要性の判断権はもっぱら被干渉国にあり、干渉が正当化されるためには被干渉国の「要請」が必要となると考えられる。他方で、干渉の目的が干渉国の安全保障や国際平和の実現であるならば、干渉の必要性の判断権は干渉国や国連安保理などに帰属し、被干渉国は干渉の申し出に対して「同意」すれば十分であると考えらえる。 国家実行の検討の結果、たとえば国際司法裁判所の2005年のコンゴ軍事活動事件判決においては、コンゴ領内でのウガンダ反政府勢力の鎮圧というウガンダの安全保障上の利益のためのウガンダ軍のコンゴ領内への派遣については、コンゴ政府の「要請」の有無ではなくもっぱらその「同意」のみが判断の基準とされていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルスの感染拡大の影響で、第1に海外における調査が不可能となったこと、第2に国際的な輸送の遅滞により文献資料等で2021年度末までに入手できなかったものが生じたこと、という2つの事由により、当初の予定通りには研究を進めることができなかった部分があったが、インターネットを通じた資料収集により補うなどして、基本的には研究計画に沿って研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度も新型コロナウイルスの感染拡大の影響で当面は海外渡航は容易ではないと思われる。そこで今年度においても、海外での調査が難しいという想定の下、インターネットや文献を通じた調査を行うことによって研究を推進し、所期の研究目的を達成していく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的拡大により海外からの資料・書籍の購入に支障が生じ、2021年度末までに納入できなかったものが生じたため、14,285円の次年度使用額が生じた。 2022年度については、これら資料・書籍も納入される予定であり、次年度の直接経費500,000円と合わせて514,285円を、資料・書籍の購入により物品費として支出する予定である。
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