研究課題/領域番号 |
20K01311
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
酒井 啓亘 京都大学, 法学研究科, 教授 (80252807)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国際司法裁判所 / グローバルな公共空間 / グローバル・ガバナンス / 司法機能 / 国際立法 / 時際法 / 領域紛争 |
研究実績の概要 |
国際裁判所が国際的な規範を適用して「グローバルな公共空間」における国際法制度のガバナンスを実施する状況を検討する本研究において、国際裁判所の機能の確認は不可欠の作業である。このため、まずは国際裁判所の代表格である国際司法裁判所の機能、とりわけその解釈機能および国際立法への寄与について確認した。その成果は、「国際司法裁判所と「国際立法」―グローバル化時代の国際社会におけるその意義―」寺谷広司編・伊藤一頼編集補助『国際法の現在: 変転する現代世界で法の可能性を問い直す』(日本評論社、2020年)37-48頁として公表した。 また、特に領域紛争の分野での国際裁判所の紛争解決機能を精査し、そこで用いられている「時際法の原則」についても考察を進めた。「時際法の原則」は、問題の恋はその行為が行われた時点の法に照らして評価されるという第1規則と、権利の創設と権利の存続とを区別したうえで権利の存続は法の展開によって求められる条件に従わなければならないとする第2規則で構成されるが、この原則を適用することにより国際裁判所は法秩序の安定性を確保してきたことが、これまでの国際判例を精査することにより論証された。これも、「グローバルな公共空間」における国際裁判所の機能を考察するうえでの前提的な知見として役立つものと思われる。この成果は、「領域紛争における時際法原則の役割について―国際判例の動向を中心に―」『法学論叢』第188巻4・5・6号(2021年)87-126頁で公表した。 そのほか、領域紛争における国際裁判所の機能を考察する際に、国際司法裁判所の判例を中心に「決定的期日」についても検討を進め、公表の準備を行っているところであるが、これもグローバル・ガバナンスにおける国際裁判所の役割を検討するための前提的作業に位置づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グローバル・ガバナンスにおける国際裁判所の役割を検討する際に、その前提的考察となる国際裁判所の機能を確認する作業は順調に進んでいる。ただ、本務校で部局に付属センターを設置することになったため、役職上その作業に従事せざるをえず、本年度後半はその作業に相当の時間がとられ、研究に充てる時間が少なくなった。このため、計画で予定していたほどの準備作業を進めることができず、成果も十分なものとはいえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度不十分であった国際裁判所の機能の再点検作業を引き続き行っていくことになる。それとともに、国際海洋法裁判所や世界貿易機関紛争解決機関、さらには投資協定仲裁などの様々な国際裁判所や(準)司法機関の活動にも目を配り、それぞれの条約レジームにおける各機関の役割とその特徴、そしてそれらがグローバル・ガバナンスに寄与する状況などを検討することになる。
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