研究課題/領域番号 |
20K01311
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
酒井 啓亘 京都大学, 法学研究科, 教授 (80252807)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 国際司法裁判所 / グローバルな公共区間 / グローバル・ガバナンス / 司法機能 / ジェノサイド条約 / ロシア・ウクライナ戦争 / 国際連合 / 訴訟参加手続 |
研究実績の概要 |
国際裁判所が国際的な規範を適用して「グローバルな公共空間」における国際法制度のガバナンスを実施する状況を検討する本研究において、国際裁判所の機能の確認は不可欠の作業である。このため、昨年度に引き続き国際裁判所の代表格である国際司法裁判所の機能を確認した。 今年度はロシア・ウクライナ戦争が生じ、武力行使の問題に関心が集まる中、ウクライナによる国際司法裁判所への提訴も国際法上の論点を明確にすることに寄与した。このため、国際司法裁判所が2022年3月に下した仮保全命令、その後の先決的抗弁手続、さらにジェノサイド条約の解釈をめぐる第三国の訴訟参加手続を題材として、国際司法裁判所の解釈機能、とりわけ集団殺害犯罪に関する統一的な解釈への裁判機能の寄与の問題について考察を行った。この成果は、「進行中の武力紛争と国際司法裁判所-ロシア・ウクライナ紛争にみる国際司法裁判の役割と限界」『国際問題』No.710で公表した。 また、同じ問題意識から、ジェノサイド条約適用事件(ガンビア対ミャンマー)国際司法裁判所仮保全命令の意義も検討し、その判例評釈を『令和4年度重要判例解説』に講評している。 さらに、より広い視点から国際社会におけるグローバル・ガバナンスの意義を確認するために、国際司法裁判所もその主要機関の1つである国連の活動を取り上げ、国連システムにおける協働作業や関連機関相互間のネットワーク化とその主導機関による危機管理方式などを検討した結果を2022年5月の世界法学会で報告し、「国際連合の下での国際秩序の諸相-国際行政・紛争処理・安全保障-」『世界法年報』42号として公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グローバル・ガバナンスにおける国際司法裁判所の役割の検討は順調に進んでいる。また、その前提となる国際社会におけるグローバル・ガバナンスの意義も、国連の活動を手がかりに考察を深めてきた。ただ、今年度は京都大学の法科大学院長としての職務に多くの時間がとられることもあり、計画通りの進捗状況ということにはならなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の最終年度になるため、特に国際司法裁判所の司法機能とガバナンス機能に焦点を当てつつ、準司法機関として貿易レジームのガバナンスに多大な貢献をしている世界貿易機関の紛争解決機関の動向も取り上げてこれらを比較しながら、研究の総括を行うことにしている。
|