研究課題/領域番号 |
20K01314
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
竹内 真理 神戸大学, 法学研究科, 教授 (00346404)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 普遍管轄権 / 国際犯罪 / ジェノサイド / 人道に対する罪 |
研究実績の概要 |
本研究は、国際平面での議論が膠着状態に陥っている普遍管轄権の法理を再検討することを目的とする。とりわけ国際犯罪に対する普遍管轄権行使が、国際平面における犯罪化と国内平面におけるその実現という側面を持ち、それゆえ国際平面と国内平面とで異なる制約や考慮に服することを踏まえた上で、それを普遍管轄権の法理全体の再構成につなげることを試みる。 概括的な整理を行った2020年度に続き、2021年度には事例研究を行った。特に注目したのが地域間の差異である。近時、とりわけ西ヨーロッパ諸国において、国際犯罪(ジェノサイドや人道に対する犯罪など)に対する普遍管轄権行使の事例が増加していることが注目される。これに対してとりわけ日本を含むアジア諸国においては、国際犯罪を国内法で犯罪化criminalizeすること自体に消極的な国が多く、ましてや国際犯罪に対する普遍管轄権の行使の事例は皆無であるといってよい。このようなアジア諸国の消極性の背後には、国際的な考慮(アジア諸国が伝統的に主権平等・内政不干渉などの原則を堅持する傾向にあること)に加えて、国内的な考慮(アジア諸国にとって国際犯罪を行使する切迫した国内的な必要が認識されていないこと)もまた存在することを明らかにした。後者については、西ヨーロッパ諸国における普遍管轄権行使の成功例が、難民や庇護申請者として自国内に所在していた被疑者に対するものであることを指摘し、対してアジアにおいてはそもそも難民条約の当事国が少ないことも、こうした国内的な必要の認識の欠如につながっている。さらにこれらの検討を通じて、既存の普遍管轄権法理が、アジア諸国の消極性・沈黙を十分に捕捉できないままに慣習法の同定を行っていることの問題性を指摘した。 以上の研究成果は、逐次論文として公表しているか、又は公表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事例研究は予定通り進んでおり、順次成果物として公表してきている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる次年度においては、これまでの事例研究を踏まえて、普遍管轄権の法理の再構成を試みる。現在ヨーロッパ諸国において普遍管轄権行使の事例が続けて現れている状況であるので、それらの動向及び他の地域の相対的な沈黙も踏まえつつ、一般理論の構築に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、コロナ禍のために予定していた外国出張が実施できなかった(国際会議での報告はオンラインで実施)。2022年度は外国出張を行うことに加え、一定の会議はオンライン化することが予想されるため、電子ブックの充実化などに予算を振り向ける予定である。
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