研究課題
最終年度である2023年度は、国際平面における犯罪化とその国内平面における実現である普遍管轄権行使の関係を整理し分析した。従来の学説は、国際犯罪に対する普遍管轄権行使が国際法上権利として確立しているということを自明の前提としているが、その結果、西欧の「肯定的な」実践からは外れるような多種多様な実践を見過ごしてしまう状況にある(アジアにおける実行の欠如、西欧以外の国において普遍管轄権の対象犯罪の刑罰に極刑を含む国内法の存在)。これに対して本研究では、普遍管轄権行使を、国際平面における犯罪化(国内法を介することなく個人に直接に責任を課すという点で垂直性を有する)の、国内平面における実現(国家間の水平的関係を前提とした管轄権制度に服する)と捉える分析枠組みを提示した。このように、普遍管轄権行使を、垂直的秩序と水平的秩序との交錯点に位置付けることで、多種多様な国家実践や発言がどのレベルの法形成に寄与するのかを評価することが可能になる。こうして「周辺」の実践を評価に取り込むことで、普遍管轄権のダイナミズムをより的確に捉えることができ、普遍管轄権の「普遍性」の再評価を行うことが可能になる。これらの成果は、年度内に英語で行った国際学会報告及び国際ウェビナー報告で発信しており、英文の論文として公表を予定している。研究期間全体を通じては、管轄権制度の法構造を再構成し、管轄権行使を取り巻く様々な要素を抽出し、それを国際犯罪の処罰の一形態である普遍管轄権行使に当てはめる作業を行った。このような作業を通じて、普遍管轄権の行使要件に関する一定の方向性を提示することができたと考える。これらの成果は、今後、書籍・論文の形で順次公表することを予定している。
すべて 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Austen Parrish and Cedric Ryngaert (eds.), Research Handbook on Extraterritoriality in International Law (Edward Elgar, 2023)
巻: no vol ページ: 164-179.