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2020 年度 実施状況報告書

共通利益に基づく軍事介入:化学兵器の使用に関する国際法

研究課題

研究課題/領域番号 20K01315
研究機関神戸大学

研究代表者

林 美香  神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (60362810)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード共通利益 / 軍事介入 / 化学兵器
研究実績の概要

本研究は、2017年・2018年の二度にわたる、シリアにおける化学兵器使用を理由とする米国の軍事行動に着想を得て、このような軍事行動において(A)一方的に介入する国家の個別利益と、国際社会が化学兵器禁止について有する共通利益の、より強く表出しているか、(B)国際法上一般には禁止されている武力行使・軍事介入が化学兵器使用への対応としては例外的に許容されている(そのような考え方が確立している)かどうか、を検討するものである。
国際法上、武力紛争における化学兵器の使用は禁止されている。この使用禁止のルールは国際社会において確立したルールである。ところが、ルール違反である化学兵器使用があった場合に、その使用の停止と再発の防止のために、誰(どの国家、あるいは国際機関)が、どのような措置をとれるのかは明らかではない。
化学兵器使用に対して第三国が空爆等の軍事介入を行うことを合法とする一般的なコンセンサスや確立したルールがない中で、仮にこのようなルールが今後形成されるならば、そのルールは何らかの形で現代国際法の根幹とされる武力行使の禁止ルールと整合的でなければならない。また、その潜在的法益が、武力介入を行う国家の個別利益としてとらえられるのか、それとも国際社会の共通利益としてとらえられるのかによって、このようなルールが許容する範囲は、異なってくると思われる。
このような一般的な背景の下、初年度は、(A)について調査を進めた。具体的には、研究着想時点で比較的情報が少なかった2018年の米国の軍事行動に関する各国および論者の評価の収集と分析を行った。また、個別利益・共通利益の対立について考える上で、国際関係において化学兵器をタブー視することの起源についても考察の必要があると思われ、戦間期の国際会議等の考察を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

分析対象である2017年・2018年のシリアに対する米国の軍事行動について、共通利益の観点からの分析を試みる、M. P. Scharf et al., The Syrian Conflict's Impact on International Law (Cambridge University Press, 2020)等の新規論考が出ており、分析を進める材料となった。
また国際関係において化学兵器をタブー視することの起源について調べる過程で、戦間期の国際会議や条約交渉等について知見を深めることができた。この部分をまとめた論考は、2021年4月現在査読にかかっている。

今後の研究の推進方策

当初の予定に加えて、個別利益・共通利益の対立について考える上で、国際関係において化学兵器をタブー視することの起源についても考察の必要があると思われるため、初年度に引き続き、この点の考察を深める。
また、使用禁止に対する軍事介入という狭い文脈からは多少離れるが、兵器の規制の背後にある個別利益と共通利益の併存・対立という観点からは、生物兵器にも目を向ける余地があると思われる。

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公開日: 2021-12-27  

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