研究課題/領域番号 |
20K01325
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
桑村 裕美子 東北大学, 法学研究科, 准教授 (70376391)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非雇用就業者 / フリーランス / 団体交渉 / 労働協約 |
研究実績の概要 |
本研究は、労働基準法上の労働者に該当しない非雇用型就業者の集団交渉制度のあり方について、労働法と経済法の役割に着目して、ドイツ法との比較により検討を試みるものである。 初年度は、役務提供者の共同行為と発注者の共同行為のそれぞれについて、現在の労働法(労働組合法制)と経済法(独占禁止法)上の帰結を確認し、2年目以降の研究の基礎作業を進めることを予定していた。この予定に基づき、当該論点に関連する日独の文献や、ドイツ・EU法上の労働者性に関する最新の議論状況をフォローした。労働者性の判断は、非雇用型就業者として議論されてきた者の範囲の変容につながりうるため、本研究の課題と密接に関連している。この点について、クラウドワーカー(オンラインプラットフォーム上で多数の仕事を請け負い就業している者)の労働者性を肯定したドイツの最新の最高裁判決(BAG vom 01.12.2020 Aktz.: 9 AZR 102/20)をめぐる問題状況も整理・検討した。また日本では、労働組合法と独占禁止法の適用関係についての基礎的研究を進めるべく、文献収集を行い、最新の立法動向についても確認した。 なお、初年度には、ドイツ法について正確な知識を得るために、ドイツで専門家と直接意見交換を行うことを予定していたが、コロナ禍で海外渡航が不可能となったため、オンライン化された国際シンポジウムに参加し、日本法の状況を発信した。そこで、ドイツの専門家と意見交換をすることができ、研究協力も得ることができた。今後はこの新たな人脈と情報技術を活用して、オンライン上で積極的に意見交換をし、国際シンポジウム等へも参加していきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各国で、まずは労働基準法上の労働者の働き方の変化にどのように対応するかが議論の中心となり、非雇用型就業者・フリーランスの問題は、収入減に対する財政援助の問題が中心となった。そのため、非雇用型就業者に関する最新の議論のフォローという点では十分行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は法の適用関係や問題状況についての基礎作業を進めたため、2年目以降はこれを基にして、ドイツ・EU法の新たな展開に焦点を当てて検討していく。また、初年度は、コロナ禍において国際シンポジウムがオンライン化され、新たな技術を利用して専門家と意見交換を行う方法について基盤を形成することができたため、2年目以降は海外の専門家とはオンラインでの意見交換を積極的に行おうと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により海外渡航および国内の他県への移動が不可能となり、会議はすべてオンライン化されたため、旅費として執行を予定していた額が残額となった。2年目以降に国内・海外への移動が可能になるかは不明であるが、それが不可能な時期が続いても、物件費やオンライン化された国際会議での講演原稿についての校正作業への謝金などに使用したい。
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