研究課題/領域番号 |
20K01325
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
桑村 裕美子 東北大学, 法学研究科, 教授 (70376391)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非雇用型就業者 / フリーランス / 労働組合 / 団体交渉 / 自営業者 |
研究実績の概要 |
本研究は、非雇用型就業者の集団交渉制度のあり方について、労働法と経済法の役割に着目して、ドイツ法との比較により日本への示唆を導こうとするものである。本研究は3年の計画で実施している。 1年目は、日本における非雇用型就業者への労働法(労働組合法)および経済法の適用関係を整理し、かつ、ドイツ法における両法の適用関係の基礎を調査した。2年目は、この基礎作業を継続するとともに、ドイツおよび日本については、労働協約制度の基礎の理解のため、労働協約の拡張適用制度の内容とその適用対象者を整理した。また、ドイツにおいて2020年11月27日に出された、プラットフォーム就労者の就業条件の公正化に向けた政府の報告書や、EUレベルの自営業者の団体交渉に関するガイドライン案を策定する新たな動きなどに着目し、その内容、経緯、今後の展望についての議論を詳しく検討した。また、プラットフォームを介して就労する者の集団交渉の在り方については、EU域内のフランスにおける新たな展開もフォローし、本研究課題の検討に資する有益な知見を得た。 そして、2年目の年度末には、本研究テーマに密接に関連する「日本における自営的就労と労働法・社会保障法」というテーマで国際フォーラム(東アジア社会保障法フォーラム)に参加し、フリーランスをめぐる日本の現状、法政策の展開および政策的課題を整理して報告するとともに、参加者との議論を通じて、非雇用型就業者への保護の在り方についての検討を深化させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目はコロナ禍の影響で、世界的に労働者の働き方の変容の方に議論が集中したため、非雇用型就業者をめぐる議論に焦点を当てる本研究の進捗がやや遅れていたが、2年目は非雇用型就業をめぐる議論が進展したため、学説や立法論の動向を整理することができた。また、2年目は研究成果の公表を、日本およびドイツで継続して行うことができたため、研究計画全体からみれば、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
3年目は、これまでの基礎的作業を整理して分析する作業を行い、本研究課題について比較法研究の具体的な成果を得るべく、成果のとりまとめを行う。また年度末を目処に、EU法の専門家との集中セミナーまたは専門家との集中議論を行う機会を設ける予定であり、比較法に関する正確な理解に基づく具体的な示唆を得ることに努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で国内外のシンポジウムがオンライン化され、当初予定していた会議等への旅費が不要となったことが主な理由で残額が生じた。3年目は成果をまとめる作業に入るので、その成果発表に向けての校閲・翻訳等の謝礼や、物件費などで使用する予定である。
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