データ駆動型経済を牽引するGAFAらによる市場支配力はむしろ維持・強化され、いずれ経済の活力をも損ないかねないという危機感から、「消費者の利益を実現するよう積極的に企業行動を制御しうる」競争法を起点とした法規制への期待の高まりが、本研究の学術的背景にある。本研究の「問い」は、データ駆動型経済における理想的な市場秩序形成に資する法規制のあり方とは何か、である。この「問い」を考察するにあたり、わが国でGAFAら巨大IT企業間の競争を確保しつつ、個人データの利用適正化やプライバシーの保護にも目配りした法規制体系について、米国及びEUの競争法やデータ保護法等の先例を分野横断的に収集・分析し、学際的かつ多角的な比較法研究を行うことを本研究の目的とし、各年度の具体的な研究計画を策定するにあたっての指針としてきた。 2022年度は、当該年度を通じ、本研究によって得られた成果をわが国に応用可能な解釈論及び法規制の設計として具体化させる作業を進めた。すなわち、データ駆動型経済における理想的な市場秩序形成に資する法規制のあり方(解釈論)とは何か、を明らかにして、実践的に解決が要請されている個別的課題についての考え方を提示する論文・報告書を部分的にでも執筆・公表し、また、併行して専門家としての講演の機会(例えば、福岡独禁法研究会や、長崎市在住の市民向け講座「茶の間の経済学」等)を積極的に活用し、本研究の成果を、わかりやすくかつ広く社会に還元することに努めてきた。 「競争」や「取引の公正性」という柔軟かつ汎用可能な概念をベースとして、解釈論と立法論の両面から、GAFAらが提起する喫緊の法的問題に対するいっそう具体的な解決策を提示すべく、新たに採択された科研費も活用しつつ、引き続き、研究を進めている。
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