2023年度は、これまでの検討内容を整理しながら、前年度に引き続き、住民主体による生活支援サービスの実施のあり方とその法的枠組みをめぐる基礎的な理論動向と問題点を確認し、住民主体による生活支援サービスの法理論の構築に向けた基本的視座を得るための検討を進めた。まず、フランスの高齢者福祉分野で住民等が主体的に活動を行う組織および関連法制度について、フランスで資料収集調査を行った。この調査では、地方自治体と主体的に活動を行う組織との協働関係をめぐる法的諸課題を把握することができた。次いで、4年間の研究実績をもとに、本研究課題に関する研究成果の取りまとめ作業を行った。取りまとめ作業では、生活支援と社会参加が一体となった、住民主体による地域の相互支援活動に着目した生活支援サービスの特質を整理するとともに、住民の主体的な相互支援活動の組織を生活支援サービスの提供主体として組み入れるという手法に着目することで、行政と住民組織との間の協働の契機を重視した、住民主体による生活支援サービスの法理論の構築に向けた基本的視座について検討を深めた。 本研究に関連する報告として、今年度は、日本医事法学会第53回研究大会シンポジウム(2023年11月)において、「医療保障とプライマリ・ケア」というタイトルで報告を行った。また、日本社会保障法学会第79回大会大シンポジウム(2024年5月)において、「介護保険と高齢者の地域生活支援」というタイトルで報告を行う予定である。いずれの報告も、論文として各学会誌にて公表する予定である。
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