本研究は、<企業組織の変動>と<就業形態の多様化>という2つの視角から導かれる「労務供給契約に対する労働法的規制の3段階モデル」(以下「3段階モデル」)を使用し、現在問題となっているフリーランスなどの「雇用によらない働き方」の歴史的位置を検討するとともに、それを踏まえて、民法において、雇用・請負・委任という名称を与えられいる労務供給契約に対する労働法的規制の今後のあり方を検討するものである。 2023(令和5)年度においては、「雇用によらない働き方」にいう「雇用」の意味を明らかにするために、日本民法制定時にさかのぼり、現代までの「雇用」の意味の変遷を素描した。その結果得られた暫定的な結論は、「雇用によらない働き方」で働くフリーランスなどのいわゆる「雇用類似者」に対して、「発注者からの仕事の委託を受け、主として個人で役務を提供し、その対償として報酬を得る者」という定義を与えるとすると、民法起草者の「雇用」の定義からすると、かかる人たちの多くは、「雇用類似」ではなく、「雇用」そのものであるということであった。 さらに、2023(令和5)年度においては、「3段階モデル」の第3段階(21世紀)における労務供給契約に対する労働法的規制のあり方の検討として、前年度に引き続き、「雇用によらない働き方」の象徴であるフリーランスやプラットフォームワーカーの法的保護について、<労働法と競争法の関係>という視点から検討を行った。
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