訴因制度は現行刑事訴訟法の当事者主義化を象徴する制度であり、その採用は刑事裁判を「真実発見」の場から当事者の攻防の「勝敗判定」の場へと転換させる意味を持つ。そのため、訴因の特定・明示、訴因変更の要否・可否といった諸問題は、刑事裁判の存在意義それ自体に関わる重要な問題であるが、従来、これらはもっぱら「審判対象論」の枠組内で検討されてきたため、これらの諸問題間の相互関係が不明確である等、理論的な解明が不十分なままにとどまっていた。本研究は、公訴対象論という観点を付加することにより、裁判論との関係をも射程に入れた新たな理論枠組を提示し、刑事訴訟のあり方を考える上で重要な視点を確立するものである。
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