研究課題/領域番号 |
20K01350
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田淵 浩二 九州大学, 法学研究院, 教授 (20242753)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 直接主義 / ドイツ刑事訴訟法 / 取調べの録音録画 |
研究実績の概要 |
本年度は新型コロナの影響により延期になった研究会が多く、研究成果を発表して意見交換を行う機会が激減したことにより、研究成果を公表することは差し控えた。研究費はすべてドイツ及びアメリカの本テーマを研究する上での基礎文献の購入に充て、文献購読により2021年度前半に研究成果をとりまとめ公表できるよう研究を進めている。 具体的には、ドイツ刑事訴訟法は直接主義の原理に基づき、同法254条1項は被告人の供述調書の自白証拠としての使用を裁判官調書に限定してきたところ、2017年8月17日の「より効果的で実践的な刑事手続を整備するための法律」において、刑訴法136条4項の被疑者取調べの録音・録画規定を改正(2020年1月1日施行)した際、254条1項も改正され、被告人の供述を内容とする録音・録画記録媒体については、誰による取調べかを問わず自白証拠として許容することにした(2017年8月23日施行)。本改正によって公判における被告人質問と取調べの録音・録画記録の証拠顕出の関係がどのように変化したかは、ドイツにおける直接主義の意義を正しく理解するために重要な意味を持つと思われるところ、本改正を詳しく紹介する先行研究を欠いた状態にある。そこで、ドイツ刑事訴訟法の2017年改正の背景、同改正時の議論、2020年1月からの施行後の運用につき、2020年度において優先して研究に取り組んだ。 他方、アメリカでは、裁判官の面前で行われた被告人供述でなくても証拠として使用できるが、書証ではなく、取調官の証人尋問の形で行われている。こうした例のように、どのような形式での証拠として法廷に顕出する優先順位を決めているか理論的基礎について研究すべく、基本文献の収集を行った。2021年度の後半からは、資料を分析し、2022年度にかけて研究成果としてとりまとめられるよう準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響により開催が延期された研究会が増え、研究発表や意見交換の機会が減少しており、研究成果として取りまとめて公表する作業がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度からは延期になっている研究会も再開する予定で既に日程調整も終わっており、さっそく報告の機会があることから、研究会における研究報告を経て、中間的な成果を順次、論文として公表していく計画である。 具体的には7月までに複数の研究会での報告を行い、9月までには最初の中間成果を研究成果として取りまとめる計画である。 その後、2021年度後半から、2022年度前半にかけて、さらに研究を展開し2022年度後半には再び研究成果を取りまとめ公表する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
約1万7千円の端数が生じたが、次年度請求分の物品費に含めて使用する予定である。
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