研究課題/領域番号 |
20K01353
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
笹倉 宏紀 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (00313057)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 法教育 / 法学教育 / 刑事法 / 法学方法論 / 公共 |
研究実績の概要 |
本研究は,初等中等教育における「法教育」と学部教育・法科大学院教育の有機的連携・架橋の在り方を検討し,各段階の教育内容・役割分担について具体的な提言をするとともに,「プロのための学問」の健全性を維持するためにもノンプロ志向が実は必須であるという認識に立って,刑訴法学の方法論におけるノンプロ志向の再定位を試みるものである。 研究期間2年目にあたる2021年度においては,「教育実践を通じて研究する」という当初の方針に従って2020年度(およびその直前)に執筆・公刊した論稿を俎上に載せる掲載誌上の座談会に参加し,本研究の基礎にある問題関心を実務家に投げかけ,その応答を得るという貴重な機会を得た。「理論と実務の架橋」という観点から大いに刺激を受けたことはもちろんであるが,参加した実務家は法科大学院生や司法修習生の「教育」に従事し,かつ,ノンプロである裁判員の参加する刑事裁判に関わった経験を有する人たちであり,ノンプロやプロの卵に対する「教育」の在り方についての研究者と実務家の意識の対比という見地からも多くの示唆を得た。しかも,同座談会には法科大学院世代の実務家も参加しており,法教育ないし法学教育の「ユーザー」の立場からの意見にも触れることができた。この座談会の記録の公刊は,本研究の目的の一つである教育内容についての「提言」にほかならない。 さらに,本研究の課題を正面から扱う法律雑誌の特集に寄稿する機会を与えられ,本研究の基礎にある問題意識を反芻し鮮明にした上で,それに基づくこれまでの思考の結果を言語化し世に問うことができた。これによって本研究の基礎部分はほぼ確立されたものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載したとおり,研究期間2年目にあたる2021年度中に,当初の想定よりもやや早く,本研究の基礎部分をほぼ確立することができた。しかし他方で,初等中等教育の現場を訪ねて「法教育」の実際を観察したり授業担当者と意見を交換をしたりすることのほか,自らも初等中等教育の現場等で「法教育」の実践を試みること,海外の法教育・法学教育の実情を実地で見聞することを予定していた。しかし,それらについては,2020年度に引き続き2021年度においても,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,実施を見合わせざるを得なかった。そこで,「おおむね」順調という自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
「現在の進捗状況」欄に記した未了の作業を実現するとともに,2021年度中に得られた「基礎」の上に「応用」の部分を築くこと,より具体的には,初等中等教育・学部・法科大学院を通じた「各段階の教育内容・役割分担について具体的な提言」をする作業に研究の比重を移していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で国内外の訪問調査を一切実現できなかったため,「次年度使用額」が生じた。 同感染症をめぐる状況は次第に改善しつつあることから,「次年度使用額」は,主として,これまで実施できなかった国内外の訪問調査等の費用に充当することにしたい。
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