2022年度の最も大きな業績として、日本刑法学会第100回大会(関西学院大学)において、ワークショップ・プログラム「没収・追徴」を行ったことが挙げられる。本ワークショップでは、薬物犯罪、財産的被害者のある犯罪および金融商品取引法上の犯罪における没収・追徴並びに没収・追徴を通じた被害回復をテーマとして取り上げ、裁判例分析等を通じて日本の現行制度の問題点を明らかにした上で、立法上の課題を提示した。このうち、金融商品取引法上の犯罪における没収・追徴について研究分担者の川崎が報告を行い、研究代表者の佐藤は全体のオーガナイズを担当した。 公刊業績としては、①川崎友巳「アメリカ合衆国における没収制度の史的展開」同志社法学74巻1号167-254頁、②佐藤拓磨ほか「〈特集〉没収・追徴制度の現状と課題」刑事法ジャーナル74号4-57頁、③佐藤拓磨「相場操縦罪における没収の範囲」判例時報2532号110-111頁がある。①は、2021年度に公刊した前作「アメリカ合衆国の没収制度に関する一考察 」同志社法学73巻3号509-539頁の続編にあたり、アメリカの没収制度の沿革を研究したものである。②は、上記ワークショップ・プログラムでの報告原稿を大幅にリライトして論文としたものであり、そのうち「解題および補足」4-15頁を佐藤が、「金融商品取引法の没収・追徴」38-51頁を川崎が執筆した。③は、相場操縦罪の類型ごとに没収対象財産の範囲を区別すべきことを示したドイツ連邦通常裁判所の判例を紹介したものである。 以上のほか、没収・追徴制度に造詣が深い若手研究者や実務家を招き、年度内に3回の勉強会(2022年4月、2022年9月、2023年3月)を実施した。
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